第91話 未来をかけた一戦

 いよいよ始まった、二度目の昇格試験。

 対戦相手であるCクラスのアーニーは戦う前から勝利を確信しているようで、余裕の態度だった。この辺はロバートと一緒だな。

 つまり……「絶対に勝つ」という仕掛けが施されている可能性が極めて高い。


 考えられる仕掛けといえば、これもまたロバートと一緒で、ダメージを受けても体力ゲージが減らないというもの。


 ただ、今回は前回と違ってギャラリーが多い。

 あまり露骨なことをすると、今後の評判にもかかわってきそうなものだが……まあ、やってみれば分かるか。


 アーニー・ライローズに煽られて、俺は剣を構えた。

 制限時間内に、俺はヤツにダメージを与えなければいけないのだが、迂闊な行動を取って逆に返り討ちとなることも十分に考えられる。あのアーニーという男は、少なくともロバートより頭は切れそうだし。


 つまり、攻撃をしたくてもなかなか手を出せない状況だった。


「ふふふ、どうした? 威勢がよかったのは最初だけか?」


 そんな俺の心理状態を見透かしているのか、アーニーはニタニタと笑いながらゆっくりと剣を抜く。やはり、こちらがすぐに行動へ移さないということを読み切っているようだ。


「それにしても、あんたは変わり者だな」

「何っ?」

「魔法でも剣術でもなく、スキルだけでのし上がっていこうなんて……本当にそんなことができると思っているのか?」

「やってみなくちゃ分からないさ」


 そうだ。

 俺がここでヤツに屈するようなことがあれば――Dクラスの学生たちは昇格試験に挑むことに消極的となるだろう。つまり、本来の昇格試験に期待されている効果が発揮されないというわけだ。


 ……上の連中がどこまで本気になってこの昇格試験に取り組んでいるか分からないが王立の学園で行われている以上、国家絡みであるのは間違いない。だとすると、この昇格試験の制度をつくった者たちからすれば、現状は不本意なものだろう。


 今回の戦い……改めて考えると、結構いろんなものを背負っているな。


「さあさあ、仕掛けて来いよ」


 なおも挑発を続けるアーニー。

 だったら……お望み通りにいってやる!


「うおおおっ!」


 俺はロバートを一撃で倒した時と同じように、魔力をまとってアーニーへと突っ込んでいく――が、


「遅いな」


 アーニーは俺の攻撃を難なくかわしていく。

 気合を入れたとはいえ、牽制の意味も込めた攻撃だが……ここまで華麗にかわせるということは、やはり実力はそれなりにあるのだろう。


 もっと速く動ければ、当てることもできるのに。

 もっと速く。


 もっと――


 次の瞬間、


「むっ!?」


 俺の剣先が、アーニーの脇腹をかすめた。


「おおっ!」

「あのアーニーに攻撃を当てるとは!」

「こりゃイケるかもしれねぇ!」


 攻撃が当たってことで、アーニーのスピードについていけていると感じたDクラスの学生たちから歓声があがる。

 ――だが、俺はその声に応えることはできなかった。


「あぁ……へぇ」


 アーニーの表情が一変する。

 さっきまでのヘラヘラした態度から、本気の目になった。


 さて……ここからが本番だな。


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