第75話 卑劣な罠
捉えた。
そう確信できる一撃だった――はずだが、なぜか俺の剣は弾かれた。
「むっ!?」
その反動で思わず体勢を崩してしまい、決定的なチャンスを逃してしまう。
……おかしい。
今回の昇格試験は、基本的に振り分け試験の時と同じルール。
つまり、強固なシールド魔法を張り、学生自身が受けるダメージはない。異なる点は振り分け試験の時のように制限時間を設け、数値化されたダメージを一定数受けると強制的に試合が止まるということ。また、振り分け試験では勝敗の結果がそのまま試験の結果に直結することはなく、あくまでも技量を図る目的で行われた。
しかし、この昇格試験は違う。
ダメージは数値化されているが、制限時間はなく、相手のダメージをゼロにした方が勝ちとなる。相手を完膚なきまでに叩きのめすのが昇格条件に盛り込まれているのだ。
だから、先ほどのように攻撃が弾かれてしまってはダメージが通らない。
その証拠に、表示されているロバートのダメージ量はゼロのままから変化がない。
「ちょっと! どういうことよ! なんでダメージを受けてないの!」
ステージの外から、ポルフィが叫ぶ。
その後ろでは、ガインさんが腕を組みながら苦々しい表情を浮かべていた。
「へへっ、てめぇの攻撃なんか痛くもかゆくもねぇなぁ」
舌を出しながら、こちらを挑発するような発言をするロバート。
冷静さを欠かせようとしているのだろうが……その安易な行為が、かえって俺を冷静にさせてくれた。
ヤツに攻撃は通らない。
あの態度はその自信の表れだろう。
恐らく、本来かけられるよりも強固なシールド魔法を身にまとっているのだろう。あれを貫通させるのは至難の業だ。
つまり……ロバートに手を貸す学園関係者が存在しているってことか。俺との対戦を許可したのも、その人物の口添えがあったのかもしれない。
ただ、今はそれが誰なのかを詮索している暇はない。
「おらおらおらおらぁ!」
ダメージが通らないことを実感したロバートは一気に攻勢へと移る。
しかし、それは攻撃と呼ぶにはお粗末なもので、闇雲に剣を振り回しているだけ。その際に生じた隙をついて反撃に映るが、ダメージ表示に変化はない。
このままでは……先にこっちが力尽きる。
「くらえ!」
ロバートは渾身の一撃を放ち、俺はそれを剣で受け止める。だが、完全に弾き返すことはできず、その場へ尻もちをついてしまった。
「もらったぁ!」
それを好機と見たロバートはさらに追撃へ打って出る。
なんとかそれを紙一重でかわしたが……あれが決定打になるのは時間の問題だ。
「ガインさん! あれは反則でしょ!」
「お、落ち着け」
異変を感じたポルフィはガインさんの体を揺らしながら猛抗議。そのうち、審判をしている教師にまで突っかかろうとしてガインさんに止められている。
ガインさんも気づいているんだ。
シールド魔法のことだけじゃなく、この戦いが止められないことを。
だったら……俺が自分の力でなんとなくするしかない。
ここまで連れてきてくれた、言語スキルで!
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