第69話 VS謎の男
出血し、その場に座り込んでいるマイロ。
すぐさま非常事態が起きていることを察した俺は、マイロを守るように謎の人物の前に立ちはだかる。
「マイロに一体何をしたんだ!」
追及するが、男は頭をフードで覆っているため表情が読み取れない。それどころか、男女や年齢の区別さえつかなかった。
ただ、不穏な空気が漂っている。
その時、俺は違和感を覚えた。
マイロの傷は、明らかに刃物によってつけられたもの。だが、フードの人物は武器らしい物を手にしていない。となると、攻撃手段は――魔法に限られる。
「マイロ! しっかりしなさい!」
「うぅ……」
ポルフィは負傷しているマイロへと駆け寄り、出血している箇所を確認するとためらうことなく自身の服の袖を破り、それを包帯代わりにした。この辺りの手当ては幼い頃から冒険者と行動を共にしているからこそ培われたものだろう。
「…………」
フードの人物は無言のまま、俺たちに背を向けた。
まったく眼中にないってことは……最初からマイロが狙いだったのか?
でも、なぜだ?
なぜマイロを狙う?
――考えていても答えは出ない。
直接本人から聞きださないと。
「待て!」
気がつくと、俺はフードの人物へ向かって叫んでいた。
このまま帰すわけにはいかない。
いろいろと聞きだしたいことがあるからな。
しかし、男は止まらない。
もう用済みってことらしい。
だったら、
「逃げる気か、この腰抜け!」
「!?」
相手はかなりの使い手と見える。そんなプロが学生の、しかも最下層であるEクラスの学生に「腰抜け」呼ばわりされたら……黙ってはいられないだろう。
男は振り返ると詠唱を始めた。
この声は……男か。
って、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
「その詠唱――いただく!」
俺は【詠唱吸収】のスキルを発動させる。
それにより、相手が放とうとしていた魔法を俺が扱えるようになった。
「なんだと!?」
フードの男にとって、これは完全に予想外の事態だった。
一方、俺は男の使おうとしていた魔法――これは風魔法か。きっと、これでマイロを傷つけたのだろう。そう思うと……許すわけにはいかない。
「くらえ!」
放たれた風魔法は、フードの男を目がけて飛んでいく。
「くっ!?」
まさか自分が放とうとしていた魔法が、自分に牙をむくとは思っていなかったフードの男は防御が遅れる。そのため、風魔法をほぼまともに食らう結果となった。
「す、凄い……」
そう漏らしたのはポルフィだった。
正直なところ、俺としてもうまくいきすぎだって気は否めないが……まあ、うまくいってくれてよかったよ。
魔法の直撃を食らった男はその場に倒れて動かない。死んではいないようだが、結構なダメージを受けたようだ。
俺はポルフィに教師へ連絡をするよう告げるが、その直後に騒ぎを聞きつけた教師たちがやってきた。
俺は事情を説明し、マイロを学園内の診療所へと連れて行ってもらうよう頼むと、教師たちからの質問にひとつひとつ答えていく。
男は拘束され、連れて行かれたが……果たして、真相は明らかとなるのだろうか。
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