第67話 マイロとポルフィ
第一回目の昇格試験の二週間前。
俺とマイロとポルフィは揃ってEクラス校舎にある図書室へと足を運び、大きなテーブルに先ほど教師から渡された一枚の紙を置き、それを見つめていた。
紙に書かれている内容は、二週間後に行われる昇格試験について――ここへ来て、ようやく試験の全容が明らかとなったのである。
内容はほとんど振り分け試験と同じであった――が、決定的に異なる点がひとつあった。
それは勝敗の重要性だ。
昇格試験はとにかく勝つことが絶対条件となる。
「なんかさぁ……学園の方針ブレすぎじゃない?」
「振り分け試験の時は内容重視だったのに、今度は勝敗重視なんて……」
「今年度から新体制らしいからな。まだ意志の統一がはかれていなのかも」
この辺の考え方のブレは嫌な感じを覚えるが……ただ、昇格条件を「勝利」だけに絞ってもらえたのはむしろありがたい。振り分け試験の時は勝ったのに現状維持だったからな。
気になる対戦相手だが、これはDクラス学生の中でも成績低迷者が割り当てられるという。さらに言えば、昇格があるということだから逆に降格もある。この成績低迷者は、俺たちEクラスの学生と戦い、敗北すればそのまま入れ替わるというルールだ。
だから、昇格試験というよりは入れ替え戦と言った方がしっくりくる。
「ともかく、誰が相手だろうとぶっ飛ばせばいいだけの話でしょ? シンプルで分かりやすいのはありがたいわ」
ポルフィは拳をガンガンとぶつけながら言う。
父親が冒険者パーティーのリーダーをしている彼女は、元々冒険者志望でこの学園に入ったらしい。幼い頃から周りに屈強な男たちがいた環境で育った彼女は、その影響もあってか言動がまさに冒険者っぽいたくましいものが目立つ。
そんなポルフィだが、振り分け試験で俺の戦いを見てから、自分の力がどこまで通用するのか試してみたくなったという。
格闘センスは素晴らしいものがあり、天性のスピードも相まってかなり強い。元から冒険者を目指していただけあり、上位クラスには興味はなかったというが、恐らく、本気で取り組んだらAクラス入りも夢ではないだろう。
「で、でも、勝てばいいという条件だと、相手も何をしてくるか……」
一方、マイロは王都にある宿屋の倅だが、幼い頃から騎士に憧れており、学園で鍛えてから騎士団への入団を希望していた。しかし、ここぞという場面で気弱な面が出てしまい、実戦形式の演習は成績が悪かった。
ただ、剣術の腕はかなりのものがあり、メンタル面での問題が解決できれば、Aクラス入り学生たちとも遜色ない実力だと思う。できればそこをピックアップして声をかけてくれる騎士団関係者の人がいればいいのだが……。
このように、ふたりとも将来有望と言って過言ではない実力者である。
きっと、Eクラスだけじゃなく、他のクラスにも明らかに上位を狙えそうな学生はいるだろう。
今回の振り分け試験が、実力を無視して家柄などを重視した結果だとすれば、学園内に眠る才能豊かな人材をみすみす取り逃がすことになる。
果たして、その辺はどう考えているのか……何も考えていなさそうだけど。
「うぅ……なんかこの知らせを見ていたら鍛錬をしたくなってきたわ」
「ぼ、僕も!」
「よし。なら今から演習場へ行こうか」
「「おぉー!」」
同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨して強くなる。
これが、学園のもつ本来の役割だと思うんだけどな。
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