第58話 試験会場へ
困ったことになったぞ。
いきなり試験だなんて……何の対策もしていない。
というか、試験ってなんだ?
一体なんの試験だっていうんだ?
俺は一度振り返り、もう少しだけ情報を得ようと先ほどの学園職員の女性に話しかけた。
「あの、試験というのは……」
「今回から実施されるようになったこの試験は、あなたたちの入るクラスの振り分けのためにするものよ」
「クラス振り分け?」
「スキル能力と魔法、そして本人のポテンシャルを試験官がチェックして、それに応じたクラスへ入ることで自分に合った授業を受けることができるの」
なるほど。
だとすれば……セスとの鍛錬が早速役に立ちそうだ。
俺はそれだけ聞くと女性職員の指示に従い、奥に進んで控室と呼ばれた講堂脇の小さな建物へと足を踏み入れた。そこにはいくつか机が用意されており、すでに到着していた同級生たちが書類に必要事項を書き込んでいた。
その中に――マシューとロレインの姿があった。
「あいつら……」
試験のついての内容が書かれた手紙は、きっと父ドノヴァンの方へ送られたのだろう。
……まあ、いいか。
間に合ったんだし。
俺は机に座り、ペンを取って書類に情報を記載。それを近くの試験官に渡し終えると、次に進む場所を教えてもらい、そこへ向かって歩きだした。
一旦外へ出て、再び講堂へと入る。
「ここが試験会場ってわけか」
なんとなく、周りの空気からそれは察せられた。
そして、試験内容も大体想像がついた。
「演習という名目で勝負をするそうよ。ただ、勝負の勝敗だけでクラス分けが決定するのではなく、どのような戦い方をしたのか――そのプロセスが大事だって試験管の先生は言っていたわ」
「っ!? サーシャ!?」
「私もいますよ!」
「エルシーまで!?」
俺たちに話しかけてきたのはサーシャだった。
その横にはエルシーの姿もある。
「とはいえ、あなたなら問題なく上位クラスに入れると思うわ」
「えっ? そ、そうかな……」
「そうですよ。自信もってください」
「自信、か」
エルシーの言う通りだな。
俺も少しは――
「おーっほっほっほっ!」
――そうそう、あれくらい声を張って……て、誰だ?
「お久しぶりですわね、サーシャ・レヴィング!」
高笑いとともに現れたのは金髪縦ロールのお嬢様。
そのわかりやすい態度から、この人も貴族だと思われる。
お嬢様の横にはこれまたいかにもな風貌をした男子が立っていた。しかし、執事っぽい服装を見なければ男と断定できないほど中世的な顔立ちをしている。
「クレアにケリー。久しぶりね」
お嬢様の方がクレアで執事の方がケリーという名前らしい。
しかし、サーシャとクレア――このふたり――交差する両者の視線の間には激しい火花が飛び散っているのが見えていた。
どうも因縁がありそうだな、このふたり。
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