第44話 秘密の場所
※次は17時に投稿予定!
「どうかされましたか?」
俺が近づくと、向こうの方から声をかけてきた。
「あなたは……」
「グルーザー家のハーレイです」
自己紹介も早々に、俺は彼に質問をした。
「すいません、ちょっといいですか?」
「なんだい?」
「姫様はいつもあんなにたくさんの人に守られているんですか?」
「それはやはり、姫様ですし」
まあ、そりゃそうだよな。
……もうちょっと探りを入れてみるか。
「僕ならちょっと耐えられないかなぁ」
「確かに、いくら姫様といっても四六時中見張られているのは辛いと思います。――ただ」
「ただ?」
「あそこへ行く時はひとりになれますし、趣味の庭いじりもできる。きっと、いい気分転換になっていると思いますよ」
おっと?
思わぬところで重要な情報のヒントを得たぞ。
「あそこ? それってどこなんですか?」
「姫様が管理している個人用の庭です。明日のパレード後には、バズリーのシュナイダー王子にそこを案内し、ふたりきりで過ごすと仰っていました」
「!」
これはいいことを聞いた。
なんとか、その場に潜り込ませることができたら……問題はその場所だ。
「その庭って、お城のどの辺にあるんですか?」
「分かりません。ほんの一部の人間にしか教えていないそうです」
むぅ。
さすがにそこは秘密か。
すでに発動している【嘘看破】のスキルは働いていないし……本当に知らないみたいだ。
俺は兵士と別れ、城内をうろつきながら考えを巡らせる。
姫様が個人的趣味で手入れをしているという庭園。その秘密の花園がこの城のどこかに存在している。その場所さえわかれば、あとはなんとかしてセスをそこへ潜り込ませるだけでいいんだ。
――だが、この庭園を見つけるのが至難の業。
あちらこちら見回してみるが、それらしい場所はどこにも見当たらない。もしかしたら、王族しが立ち入れないエリアが城内に存在しているのか……まあ、冷静に考えたら王族のプライベート空間なんだから、そんなわかりやすい場所にあるわけないか。
しかし……そうなると参ったな。
ぶっつけ本番で侵入できるほど甘くはない。
綿密な計画を立てている時間はないが、それでも可能な限り成功の確率を上げていく必要がある。
そのためにも、姫様の庭園の場所を正確に把握しておくことは最低条件だ。
どうしたものか……俺が頭を抱えていると、
「――――」
うん?
今、何か聞こえたような。
辺りを見回しながら、俺は耳を澄ませる。
「――――くれ」
聞こえた!
間違いない、誰かの声だ!
か細く、今にも消え入りそうなその小さな声の主を求めて、俺は城内を探し回る。その声はだんだんと大きくなっていく。――だが、不思議なのは誰もこの声を気にしていない様子だということ。兵士もメイドもまるで無視。だからといって幻聴とは思えない。となると、導き出される答えはひとつ。
「俺にしか聞こえない声――モンスターの声か?」
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