第43話 侵入ルートは?
明日も12:00より投稿予定!
セレティナ姫の婚約記念パレード前日の朝。
俺と父上、そして母上の三人は結婚式へ出席するため王都へと来ていたのだが……その賑わいを目の当たりにした俺は唖然とした。
ざっと見積もっても普段の三倍は人がいる。……これ全部、明日のパレードのために集まった人たちなのか。
もちろん、王都へ入るためには何重にも渡る身元チェックが行われているため、そのひとつでもパスできない者は通ることができない。そのため、検問所はいつも以上に王都へ向かう人で混雑していた。
「凄い影響力ですね……」
「ああ。こりゃ王都へ入るにはかなり時間がかかりそうだ」
ため息交じりに父上が言う。
俺たちは立場的にすんなり入れるとはいえ……一般の人たちは全員今日中に王都へ入れるのか?
そんなことを考えていると、城へ到着。
俺にとって王族の結婚式への出席っていうのは初の出来事……そのため、緊張しまくっていた。両親は城の人たちと楽しげに会話をしているが、俺にそんな余裕はなかった。
粗相をしないようにという緊張感もあるが、それ以外にも――セスの侵入ルートを考えなくてはいけなかったからだ。
当日、あの検問所が最初にして最大のネックになるだろう。
何せ、セスは見た目だけでだいぶハンディキャップがある。父上の持っているコートをこっそり借用し、それに身を包んで紛れ込むというとこまではいいが、あの検問所を突破しないことには意味がない。
検問所以外で侵入できそうなところはないだろうか。
――答えは「NO」だ。
対モンスター用として、王都は背の高い壁で囲まれている。ここを突破するのは容易じゃない。というか、乗り越えようとしても、その最中に捕まるのがオチだ。
それに、当日は今以上の数の兵士が所狭しと検問所周辺や王都内を見張るだろう。それこそ猫一匹入れない警戒態勢となるだろう。
あと考えられるのは積み荷に紛れるとかその辺かな――
「うん?」
辺りへ視線を向けていると、城の窓から王都近くを流れる川を発見した。
「そういえば……王都内には運河があったな」
ここから小型の商船が出入りしているのを見たことがある。
「たしか……セスは泳ぎが得意だと言っていたな」
おまけに潜水時間はかなり長い。以前、ソフィに言葉を教えている間、泉の中で1時間ぐらい潜っていたことがあったな。
……ちょっと調べてみるか。
俺は両親にお願いをして、わずかだが王都内を見て回る時間をもらうことに成功した。
王都に出ると、すぐさま運河に近づき、水深を確かめてみる。……うん。これくらい深ければ、水底を進んでいても見つかる心配はなさそうだ。
「侵入経路はこれでいいだろう。あとはどうやって姫様に会せるかだけか」
それが一番難しいし、苦労する点だろう。
パレードの後でも前でもいいから、なんとか姫様がひとり――は無理でも、せめて数人単位の警護であればなんとか気を引くことができるかもしれない。
そんな時間がないかどうか、あとで時間ができたら関係者の人にそれとなく聞いてみるとしよう。スキルを発動すれば俺に嘘は通じなくなる。その利点を最大限に生かすんだ。
城へと戻った俺は、セスが運河を通して王都内に侵入してから、どうやってこの城内へ潜り込むか、そのルートを模索していたが、
「やっぱ無理かも……」
そんな言葉がつい出てしまうほどに隙がない。
一体、どうしたものか……悩む俺の前に、ひとりの兵士の姿が飛び込んできた。
「……よし」
少しでも侵入のヒントを得ようと、俺は兵士へと話しかける。
もちろん、スキル全開で。
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