第23話 旧鉱山の真実【後編】
話している複数の男たちのうちのひとりから、「オーク」、「レヴィング家の令嬢」という言葉が出た。これは間違いなく、サーシャを襲った赤オークのこと。そして、邪魔をした少年というのは俺のことだ。
「魔鉱石を埋め込んだオークを倒すなんて……末恐ろしい子どもだ」
「間違いなく将来このアースダインの中枢を担う人材だろうな。恐らく、トレイトン会長がすでに取り入ろうといろいろ手を回し始める頃さ」
とうとうアレン・トレイトンの名前も出たか。
それに、あの赤い鉱石――魔鉱石とやらが、モンスターを強化させた要因らしい。
あとは……その取引相手がどこなのか分かればなぁ。
「第二班は引き続き坑道内で採掘作業を。残りの者は今採掘した魔鉱石を工房へ運搬だ。手の空いているヤツは工房班の応援に回れ」
責任者であると思われる男が指示を飛ばす。
慣れた手際を見るに、長らくトレイトン商会に属する者か。
その場にいる人数は軽く見積もって四十人くらいか。坑道の中にはまだ作業している者もいるだろうし、実際はもっと多いだろう。
「おら! 休んでんじゃねぇよ! とっとと運べ!」
一際大きな声がしたのでそっちへ視線を移すと、強面の大男がトロッコを運ぶ作業員たちへ居丈高に怒鳴っていた。その作業員というのが、
「嘘だろ……」
子どもだ。
まだ十歳前後の子どもたちが重たい魔鉱石の詰まったトロッコを押し、そこから下ろして箱へ移す作業を黙々とこなしている。中には俺と同じくらいの小さな子までいた。
「あの子どもたちは?」
「お隣さんで戦災孤児になったヤツらです」
「あんなやせ細った連中ばかりじゃかえって足手まといでは?」
「その点はご心配なく。確かに、連中ができる仕事は限られていますが、それを補える利点があります」
「どういうことだ?」
「ヤツら、普段は麓にある村の近くに建てた孤児院って名前の檻にぶち込んであります。戦争で親を失った隣の大陸の子どもたちに仕事を与え、立派に育てているって慈善事業のアピールになりますし、それに対する補助金ももらえる――しかもボスの評判も上がるってことで利益が大きいんですよ」
「なるほど」
……おいおい……まさかここまで大犯罪人だったとはな。レビング伯爵の心労がさらに重なることになりそうだ。
俺は隙を見て魔鉱石を一部拝借し、それをリュックの中に入れてその場をあとにした。とりあえず、現物はいい交渉材料となり得る。これを材料にし、あの嘘つき商人から決定的な言葉を引っ張り出せればいい。
帰りはちょうど街へ向かう馬車を見つけ、その荷台へと潜り込むことに成功。これで母上と約束した夕方までには帰れそうだ。
――おまけに、魔鉱石って手土産までくっついてきている。
「やりましたね、ハーレイ殿」
「おう。……報告が楽しみだ」
そう決めて、俺は手にした魔鉱石を強く握りしめるのだった。
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