コミュ力向上のために言語スキルをマスターしたら、引く手あまたの英雄になりました

鈴木竜一

プロローグ  ~出来損ないのハーレイ~

※次は正午に投稿予定です!



 この国でグルーザーの名前を知らない人は少ないだろう。

 代々オルデア王国魔法兵団の重役を担ってきた由緒ある魔法使いの一族で、現当主のドノヴァン・グルーザーは王国魔法兵団長を務めている。

その実力は歴代最強最高の魔法使いと評されるほどだ。

 何を隠そう、その当主というのが俺――ハーレイ・グルーザーの父親だった。

 俺は、そんな偉大な父の最初の息子としてこの世に生を受けたのだ。


 グルーザー家は、王国生誕の頃からずっと王家を支えてきた。その功績から、いろいろと特別待遇されてきている。


 その背景にはあるカラクリがあった。

 家に生まれた者は並外れた魔力量を有して生まれる。

 優れているのは魔力量だけじゃない。

 身体能力についても、凡人を遥かに凌駕する。


 ゆえに、グルーザー家の人間は生まれたその瞬間から特別視されるのだ。


 ――と、まあ、こんなふうに、グルーザー家というのは代々バケモノじみた戦闘能力を持った人間が生まれるわけだが……その長い歴史に初めて生まれた「汚点」が俺だった。

 物心ついた時から、父の跡を継ぐために鍛錬の日々が始まる。

 しかし、それは同時に苦痛の日々でもあった。


 風魔法はダメ。

 炎魔法はダメ。

 水魔法はダメ。

 地魔法はダメ。


 どれをやらせてもセンスの欠片もない。

 何より周囲を落胆させたのは、もっとも優れているはずの魔力量が一般人よりも大幅に劣っていたことだった。


 これが決定打となり、俺は完全に居場所を失うこととなる。

 周囲からの視線に怯え、陰口に心が傷つけられる毎日が待っていた。


 さらに追い打ちをかけたのが……双子の弟と妹が生まれたことだった。

 弟のマシューは父に匹敵する魔力量と類まれな武術の才を持ち、妹のロレインは五歳にして新たな魔法体系を生みだす天才児だった。

 これにより、俺の立場はますます悪化していく。

 次第に、俺は誰とも話さなくなっていった。

 身近な世話をしてくれるメイドや執事でさえ信用できない。


 そのうち、俺は周りからこう呼ばれるようになる。



「出来損ないのハーレイ」――と。

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