⑤日常への帰還のはず、が

 それにしても、今日は特に大変な一日だった気がする。ただでさえ癖のあるバイト仲間が多いのにあれだもんな……。今日という日を忘れることは恐らくないだろう。

 一人暮らしを始めてから、幾年もの寝食を共にしたアパートにようやく帰還する。

 階段を上がり二階の通路を進んでいくと、俺の部屋の窓から光が漏れ出ていた。

 あれ……電気つけっ放しにしたっけ?

 というかそもそも、朝家を出たんだから電気がついているなんてありえないはず。

 小首を傾げつつドアの前までやってくると、何やら複数人の笑い声まで聞こえてきた。

 テレビの音?

「まさか、強盗とか?」

 ちなみに、ノブの鍵はちゃんと掛かっていた。

 こんな貧相なアパートに押し入るとかどんだけ金に困ってるんだよと突っ込みを入れたくなるが、最悪の場合俺の能力でなんとか切り抜けようと言い聞かせたところで、ゆっくりとそのドアを開いた。

 廊下を進んでいくと、特に大きな笑い声を上げている人物がいることがわかってくる。

 人の気配を感じるリビングに足を踏み入れると、思ってもみない人物が待っていた。

「あ、おかえりなさい」

「ななな……!」

 制服姿の女子高校生。しかも体が半透明になっている少女が、呑気にバラエティ番組を観賞していたのだ。

 俺が助けた花柄ハンカチの少女と、まさかまさかの自宅で再会する羽目になった。

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