パートナーは俺の中にいる(物理)

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はじめに 俺という男

ちょっと長めの自己紹介

 俺は特殊能力を持っている。

 これは決して中二病の妄言などではなく、表現するならそれ以外に適切な単語がないのである。まあ今じゃ【神授の力】とか、ださい呼称を付けているけれども。

 俺がこの力を認識したのは、十年以上は前のこと。物心がついてまもなくの頃だった。


 当時小学生の俺は、いわゆるクラスの人気者に憧れていた。

 何をしてもみんなが笑うし、何を提案してもみんなが付いてきてくれる。

 そんなおよそ欠点なんてないような人間に、俺もなりたいなと、そう思っていた。

 そんな羨望のまなざしを、自席に座ってそいつに向けていると、いつの間にか俺の周囲にたくさんのクラスメイトが集まっていた。

 しばらくの驚きと疑問の後、俺はようやく何が起きたのか理解した。

 俺は「そいつ自身」になっていたのだ。


 つまるところ、俺の特殊能力とは「他人の体を乗っ取る」ことにある。

 本体である自分自身の体は放置され、机で居眠りしているかのように、魂のない抜け殻と化していたが、「俺」という意識は人気者のそいつに収まっていたのだ。

 この力がどうして俺みたいな人間に授けられたのかは未だにわかっていない。

 当時の俺がそれよりも気になったのは、この力でできることの範囲だった。

 色々な人物に能力を試した結果、わかったことは二つある。

 乗っ取ることができるのは人間に限るが、老若男女に制限はないこと。

 そして乗っ取る時間にも制限はなく、その気ならば何日でも対象の肉体に収まっていられるということ。

 まあその間俺自身の肉体は抜け殻となるので、やるのであれば、本体を安全なところに置いておかないといけなくなるが。


 小学校を卒業する頃にこれを理解してから、俺は「他人の体を乗っ取る」能力を使い、様々なことをするようになった。


 中学生では性欲のままに能力を使用し続けた。

 女の体も乗っ取れるとなれば、健全な中学男児がそうするのは何もおかしいことではないだろう。対象者の体そのもので遊んだり、あるいは性別を利用して男じゃ入れない領域に踏み込んだり。

 その結果、そう簡単にはアレが起たなくなった。


 高校生では世の中の裏の世界を覗くようになった。

 周囲の世界だけに限らず、ヤクザとかマフィアとか、タレントとか政治家とか、そういう人間の世界に興味を持つようになった。そしてそれらを余すことなく脳裏に焼き付けた。

 その結果、そう簡単には気が立たなくなった。


 大学生になってからは、何かに興味を持つようなことも少なくなり、時間を余らせるようになったため、暇さえあれば勉強するようになった。

 自分で言うのもなんだが、そこらの同級生よりは頭が良い方だとは思う。

 つまりその結果、今度は、弁が立つようになった。


 ……えっと、またもやださい感じになっちゃったわけだけど、そんな俺が誰なのか、最後くらいシンプルに自己紹介するとしよう。

 俺の名前は表野駿一。都内の征州大学に通う大学生で、年齢は今年で21。

 特殊能力以外に特筆すべき点はない、中肉中背の平凡的な一人の男だ。

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