黒カラスのウィズ

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 僕はカラスのウィズ。

 でも、呪われているから、他のカラスと違って体が真っ黒だ。

 皆は、空の雲の様に真っ白な体をしているのに。


 そのせいでいつも仲間はずれにされている。


 話し相手がいなくて寂しい。

 遊び相手は当然いないし退屈。


 他のカラスは、皆仲が良い。


 体が大きかったり、怪我をしていたり、ちょっと声が変だったりする奴がいるけれど、そいつらは仲間と問題なく仲良くしている。


 僕だって、体がちょっと黒いだけなのに。


 どうして僕だけ仲間外れにされてしまうんだろう。


 そんな僕は、餌の取り合いに負けてよく怪我をする。

 皆、僕を見つけると容赦なくつついてくるから、いつも傷だらけになってしまうのだ。


 でもそのおかげなのか、傷を治すために薬草を見つけるのが上手になったんだ。


 僕は薬屋の黒カラスとして、大陸中を渡り歩くことになった。


 同じカラスからの評判は良くないけれど、他の種族にとってはそうでもないみたいだ。


 この間薬を売った奴なんて、「黒いカラスなんて珍しいわね。今日は良い事あるかも」なんて言って、なでてくれた。


 もしかしたら、僕はカラスでいる才能がないのかもしれないな。


 カラスじゃないなにかになる才能が大きかったに違いない。


 何だか少しだけ嬉しくなった僕は、もっともっと大勢に喜んでもらうために「薬屋の黒カラス」の看板を掲げて、仕事に精をだした。


 そうしたら、あっという間に有名カラスに。


 どこからもひっぱりだこ。


 でもある日、薬を売ったお礼に親切なおばあさんが僕にかかった呪いを解いたんだ。


 そしたら、黒かった体が真っ白に。


 今までの僕なら嬉しくなると思ってたけれど、実際にはそんなに嬉しくならなかった。


 仲間のカラス達と混ざっても生きていけるって事は良かったけど、目立たなくなったから薬がぜんぜん売れなくなってしまったのが悲しい。他の薬屋にお客さんが流れていく。


「なんだお前、白くなったのか、なら俺達の仲間だな」って言ってくれたカラスは。悪い奴らじゃないんだろうけど。


「あらあら黒いカラスさんじゃなくなってしまったのね、もったいないわ」って言って残念がってくれたおばあさんも悪い奴じゃないと思うんだろうけれど。


 僕が黒いか白いかってそんなに重要な事なのだろうか。


 そんな風にもやもやしている僕はある日、背中から黒いツバサを生やした少女に出会った。


 見た目のほとんどは普通の人間なのに、背中が違うから普通の人間じゃないみたいだ。


 喋る言葉もなんだか変だし、言葉が通じない。


 僕の背中にもツバサはあるけど、これじゃあ仲間か、仲間じゃないか、判断に困ってしまう。


 でも、お客さんではあったようだったから、商売はきちんと行った。


 お薬を売って、お金は、うーん。なかったようだから宝石とかをもらった。


 そのうち、何度もやりとりするようになったから、仲良くなってお喋りの内容も分かるようになってきた。


 言葉が分かってみると、楽しい事ばかりだ。


 その女の子は僕の知らなかった事たくさん知ってるから、話をしてても飽きないし。


 その時、僕は分かったんだ。


 仲間とか仲間じゃない奴以外も存在してていいんだって。


 必ず何かに分けなくても仲良くくできる奴がいるんだって。


 それが分かってからは、僕は少しだけ楽になった。


 僕は黒いカラスでも、白いカラスでもなく。


 ウィズっていう名前の、昔は黒かった、でも今は白いカラス。でいいんだって。


 そう思えるようになったんだ。


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黒カラスのウィズ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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