第13話 いけない御本と・・腐婦人への道の始まり(え?)

アリシアは本の山から

とても綺麗な絵の本を選ぶ


「あ…アリシア姫様 それは」何か言いたげな女官の一人


しかし別の女官の一人がそっと、その女官に小声で言う


「まぁ…少し種類は違うけど あれは…夜伽の事を書いた本

一応は有名な名作で人気もあるし、物語としても面白い」


にいいんと笑いながら、それが必要だとばかりに偉そうに言う


「何より、アリシア姫様は

いずれ…黒の王様、アジェンダ王様の側室…

いえ、あのアジェンダ王様の御様子だと妃になられるお方」


世継ぎのお子様を作る為にも、あの手の本は必要


心構えをして頂かなくては…」



「そんな事を言って…知ってるわよ

貴方、あの本の作者の大ファンでしょう…」


「あれは最新刊…まだ店に出てないはず、こっそり読むつもりでしょう」


「う…でも貴方も同じく…

ファンなのは知ってるわよ」


「まぁ…純真無垢なアリシア姫様が

あの手の本にはまらないとは思うけどね」


「先々代 アジェンダ王様のご祖父になる

黄金の王さまも 同性の恋人が多かったわね」

にっと笑う女官たち



しかし…二人の予想を裏切り、しっかりとはまるアリシア


つい…冗談半分で…書いたアリシアの…

その手の作品が本になり


爆発的に売れまくり


二人の女官も

アリシア姫の作品の大ファンになるとは



この時点では…誰一人、知らない

予想もしてない…


もちろん謎の覆面作家として…

今も読まれてる…名作を書いた作家となる


内容は、まあ大人向けというか、ちょっとセクシー系だが…


歴史の上では、今なお、その正体は不明である


しかも…その原稿を本にする商会(言わば出版社)に

持ち込んだのは…と言うか渡したのは…



実は…偶然、油断してしまって隠すを忘れ、

机の上にあったアリシアの原稿を読み


この手の…話ではあったが


内容に感心(?)した

将来の夫のアジェンダだった




そうしてアリシアは例の自分が選んだ綺麗な表紙の本を読もうと

クローゼットの中の本棚から

取り出してソファーに座り込み、本を読み出すアリシア


しばらく後に段々と顔が赤くなる



「あ…あの本を読んでるわアリシア姫様」


こっそり 覗き見る女官 二人


「あ!赤くなったまま…一気に読み終えて それから慌てて、

クローゼットの本棚にしまった」


「あら、クローゼットの方をじっと見てる」


「あ!クローゼットから取り出して、赤くなりながら

嬉しそうにまた読んでる」

「え…?」


1時間後


「まだ、読んでるわ 何度も繰り返し読んでる」

「頬を赤く染めて、本当に嬉しそう」



「はまったわね…ふっ」力強く頷く女官の二人


「アリシア姫様本人は言えないと思うから」


「そうね、私達が王室御用達の本の商人に内密に頼んで置きましょう

彼らは口は硬いし、商売人だから安心ね

続きの本に、前の話の本に番外編…他の作品の本も」


「で、本を並べてもらい

それとなく、私達が選んだふりをする」


「いい案だわ」


「もしかしたら、アリシア姫様が気が付いて

他の本に混ぜて、ご本人が選ぶかも…」


「あり得るわね」



「黒の大貴族の姫君や奥方様にも

あの作者のファンは多い


もちろん、その指向を持つ大貴族様に


その手の…愛人を持つ大貴族様も」



「うふふ…どうせなら私達、お勧めの他の作家の本も」


「いいわね…そうしましょう」にやりんと笑う女官の二人


こうして…立派な腐女子へとさり気に教育され

変身するアリシア姫


ある意味、大問題だった。


窓の外、木の上で眺めている者達


「あれが原因か?」

頭を抱えている 長い黒髪の少年 髪は緩く、三つ編み


「・・みたいだな」もう一人の少年 紙は彼に比べて短めだが 良く似ている

平然として見ているが、口元や眉がピクピク


「うんうん、頑張って魅惑のBな本書いてねん ああ、愉しみ ぐふっ」

黒猫耳の美少女アシャ 尻尾がパタパタ


「あ~~しゃあ」二人が黒猫耳の少女に向かって

うめき声のような声で美少女の名前を呼びかける・・。


「はあい 黒猫のアシャですよん、うふふん」


「俺、頭が痛い」「俺もだ」


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