第9話 黒の王宮
「黒の王様 この娘は?」
「アリシア姫だ 黒の貴族の姫君だ
彼女は黒の王族の血を持っている 大変な目にあった」
「薬師を呼べ、それから姫は 今後は王宮に住む
離れの一番上等な部屋を用意せよ」
「風呂の支度もだ それに衣装などの必要な物に姫付きの女官達を
心優しい細やかな気配りの出来る女官を選べ」
「はい、王 解りました すぐ手配致します」
女官が礼をした後で 準備の為に立ち去る
「アジェンダ王様
ところで、その姫君の父上 名前はなんと言われるのですか?」
傍付きの腹心の家臣、側近でもあるクインが問いかける
「アリシア姫 父君の名前は?」「あ‥あのダルトア男爵です」
アリシアが小さな声で問いかけに答えた。
「えぇ! ダルトアですと 確かに傍系ですが、王族の血筋です」側近のクイン
「しかしダルトアは、先の水の女王であり黒の女王エルテア様に黒の大貴族達を
暗殺しょうとした罪深き者」
「アジェンダ様の母君
エルテア様の夫の火焔の王ナテア様がたいそうお怒りになり
男爵は首を跳ねられ処刑、一族の者は残らずに奴隷にせよと厳命を」クイン
「その命は撤回する 既に私の父も母もない 私がこの国の王だ」
冷たい表情で アジェンダは言う。
「既に王命は下した」
「アリシア姫は奴隷の身分から解放して黒の貴族の姫の身分…
いや、王族の血を持っている これより黒の大貴族の姫だ 」
「ああ、そうだ一族の者達も解放する黒の貴族として 生き残りはいるか?」
アジェンダ 彼の赤い瞳の視線がアリシアへと向かい 優しく見ている。
「いえ 王様 男達は鉱山に送られ、落盤事故で
皆、死んだとの報告があります女達は自害や以前の疫病で」
「子供で生き残りは娘の一人だけと」側近のクインの話
しばしの間の沈黙の後で アジェンダはそっと呟く。
「そうか 可哀想に姫」
「それから、その暗殺未遂事件だが、再調査せよ
クイン、そなたもあの腹黒い狸の事は 前々から良く知っているはず
他にもあの狸の事を調査せよ 今度こそ、ルアンナ、尻尾を掴んでやる」
女官の一人に命令するアジェンダ
「王様 アリシア姫様の御部屋の準備が整いました」
「治癒の薬師も呼んでおります 湯浴みの支度も済んでおります」
「わかった、頼んだぞ
ああ、それから軽い食べ物に飲み物や果実も
後で一緒に食事をしょう アリシア姫」
アジェンダ王が微笑しながらアリシアに言った。
「あ、はい 有難うございます なんと感謝していいか 私」
涙が流れ落ちるアリシア
そっと頬にキスをして涙を指先で拭うアジェンダ
「良い、気にするな」
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