社長令嬢と借金執事

琴葉 刹那

プロローグ えっ?しゃっきん?

「咲斗・・・君には借金を払ってもらう。」

「えっ?しゃっきん?」

突然家に押しかけられたと思ったらこの人はいったい何を言っているのだろう。一瞬理解できなかった。

しゃっきん。シャッキン。借金。・・・借金!?

「ちょっと待って下さい!どういう事ですか!?」

脳内での文字変換を終えた僕は前のめりになり気づいたらそう叫んでいた。すると予定調和だと言わんばかりにさも当然の如く衝撃の事実を伝えられた。

「そのままの意味だよ。君の父親が逃げたからね。君に借金を払ってもらう。」

えっ?父さんに借金あったの?

完全に寝耳に水であり、ますます混乱。いや頭が痛くなってきた。

・・・寝よう。

そう。これは夢。夢だったんだ。きっとこの夢で寝たら現実で目が覚めていつもの当たり前の毎日が来るに決まっている!

思い立ったが吉日と僕は椅子にもたれかかり寝息を立て始めた。

「待て待て待て!寝るな寝るな寝るな!これ現実!This is real!酷だと思うが受け入れろ!」

眼前の中年男が両の手を振り、大声を出しながら止めてくる。近所迷惑ですよ?

ちなみに思ったことをそのまま伝えると「俺ここの持ち主なんだけど!?」と言われた。いやでも近所迷惑は近所迷惑ですし。

するとさっきから叫んでばかりの人は不貞腐れた。これでとりあえず考える時間が出来たぞ!

借金した当人が逃げたというなら若干十五歳の僕に返せるわけがないだろうなぁ。どうにか僕を捨てたあの父親に借金全額背負わせれないだろうか。元々あの人が借りたんだし。

仮に無理にしても未成年、保護者夜逃げ、本件に関して無知、そもそも借りた本人じゃないのを理由に十、いや最低でも五年の猶予を取らないと!

僕は稼いだ僅かな時間で状況整理。キャパオーバーを迎えフリーズしかけた頭を必死にフル稼働させ一先ずの方針を決定。

結論。全部あいつが悪い!

具体的には全部あの父親のせいにして時間的、または金銭的猶予を獲得。あわよくば逃げた薄情者に背負ってもらう。借りた本人だしあわよくばが通ればいいなぁ。丁度良い罰にも薬にもなるし。

「借金とはどのくらいの額なのでしょうか?」

とりあえずこれだけは確認しなければ。そもそも交渉とて前提条件を知らなくては始まらない。

僕は相手が持ち直してきたのを確認すると震える声でそう切り出した。

(まぁ。父さんが逃げる時点で嫌な予感するけど・・・)

「ふっ、ふっ、ふっ。聞いて驚けその額なんと!」

この人も大分テンションおかしくなってきたな。

あぁ。聞きたくない。耳塞ぎたい。絶望しかけの僕を他所に告げられた金額は・・・

「———十万円!!!」

「・・・へぇっ?」

・・・全然とんでもなくなかった。むしろ頑張ってバイトしたら長くても生活費込みで一年以内には払えるだろう。

「少な・・・。」

「少ないとはなんだ少ないとは!十万円あればここに二ヶ月住めるんだぞ!」

あっ。今更だけどさっきから熱弁してるこの人大家さんね。アパートの主角谷英矢さん。

角谷さんは大仰に手を振り叫ぶ。

いやでも・・・

「言っても十万円ですよ十万円。借金って言われたらもっと多い気するでしょう!」

「あっ。いや、その〜。」

「何ですか・・・」

僕は言いたいことがあるならはっきり言えと言わんばかりに目の前で言いづらそうにしてる角谷さんにジト目を向ける。なんか立場逆転してない?いくら思った程の金額じゃ無かったとは言えなんで僕強気に出てんの?そう思ったがとりあえず優位に立てていると前向きに解釈し角谷さんを鋭く見据える。すると角谷さんは頭をポリポリとかき、

「いやさっきの十万はうちに滞納されてるやつって意味でな。・・・他所から借りててきたやつ合わせれば・・・多分二百万くらい行くんじゃね?」

「・・・は?・・・」

にっ、にっ、二百万っ!?

嘘でしょ!?

っていうかあの笑みの裏でどれだけ借りてたのあの人!?

っていうかお金欲しいならいい加減働けや!

「あいつ『置き手紙用意してる』って言ってたけど・・・その様子だと見てないな?」

「見てないっていうか・・・どこ見てもありませんよ?」

いつも朝家でゴロゴロしていた父さんが見当たらなかった時点で家の隅から隅まで探した。

結果。父さん及びバック、非常食、スマホ等々並びに置き手紙までもなし!

角谷さんは重そうに口を開き

「あいつ、また旅に出るらしい。でまぁあいつはまともに働く気なくて・・・君の出世払い狙いで・・・」

「もしかして・・・」

嫌な予感がした。数々の不幸に見舞われている今日最大の。いや。今世紀最大の嫌な予感が。

「君を連帯保証人にしていたんだよね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

うん。落ち着こう。スーハースーハー。深呼吸深呼吸。とっても大事。もう一度しとこう。

僕は息を吸い、そして

「ふざっけんなあぁぁぁぁ!!!!!!」

———力の限り叫ぶのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

初めましての方は初めまして。そうじゃない方はお久しぶりです。琴葉刹那です。

さて、今回は借金もの書いてみたくなったので書きました。ん?前言ってた二次創作はどうしたって?いやぁ。あれは、調子に乗ってたら長くなり過ぎたのでまたの機会にします。

テスト期間入った。入ってしまった。いやだーーーー!!?勉強したくなーーーい!!

哀れな文章を横目にそれではまた。ばいばーい。

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