リスカ探偵花ちゃん

犯人あてっぽいやつ

<登場人物>


・花ちゃん…腕を切っちゃう系メンヘラ女子高生にして名探偵。


・泉くん…語り手兼ツッコミ兼助手。花ちゃんの唯一の友達のDK。


〈登場人物〉


・佐藤…被害者


・鈴木…犯人候補


・高橋…犯人候補


・渡辺…犯人候補


  <問題編>


「ここは美術室。顔面の原型がなくなるほど殴られた死体が一体。それも見事に顔面だけ集中砲火。でも死因自体はお腹にグサッと刺されたせいでしょうね。だから凶器は普通に包丁。もしかしたら凶器に指紋がついているかも。でも、そうだとしても、私は高校生。捜査なんかできない。ってことはさ、呑気に犯人探すより警察を呼ぶべきじゃない?」


 花が真顔で腕をカッターでザクザク切りながら言った。床に血が滴っている。警察を呼ぶつもりなら、現場保存的に血液を床に付着させるのはまずいのではないだろうか。


 それに俺ら第一発見者だし、犯人の定石じゃん。


「や、そこはこの小説の趣旨、犯人あてだからさ。細かいことは置いといて。つーか、花探偵でしょ? 犯人考えてよ。それに都合が良いことに、犯行が可能だったのは三人だけだったんだし」


「三人しかいないのは、作者が複雑な話書けないからでしょ。しょうがないな、考えてあげる。そうじゃないと話進まないしね」


 花は作者の都合を考えることができる心優しい探偵なのだ。


「じゃあ被害者の特徴を言っていくぞ。被害者は佐藤。花の隣のクラスの奴だな。残念ながら跡形もないが、生前はなかなかの美人、性格も明るく、クラスの総代、部活は女バスとクラスカースト最上位に君臨している。ゆえに、クラスメイト、教師陣からの信頼も厚い。正直、全く殺される理由が思い当たらん」


「え? 人生恵まれすぎじゃない? それだけで殺意湧かない? それになんで被害者について詳しいの? 佐藤のストーカーなの?」


「お前、本当に性根腐っているよな…。佐藤について詳しいのは尺の都合だよ。で、問題の犯人候補だが、そいつらだけ、死亡推定時刻前に美術室に用があったこと、になっている」


「なっているって何!? ミステリとして破綻してない!?」


「深く考えるな。犯行ができたのはこの三人だけ、という設定なんだよ。だけど、全員動機がないんだ。だから、花にはどうにか動機の線から犯人を捜してほしい」


 そんな雑な謎解きたくない! とかなんとかグダグダ言っている花はこの際置いておこう。尺は短いのだ。では花の機嫌が直るまでの間、俺が調査した犯人候補の情報をどうぞ。


 一人目・鈴木。佐藤と同じクラスで、いつも佐藤とつるんでいた。俗に言ういつメンというやつ。流石佐藤と親友というだけあって、鈴木もかなり美人。まだ佐藤が死んだという実感がないのか、茫然としていた。ただ、時折鏡で自分の顔をチェックしているのが気になった。美術室には学祭のポスターのための絵の具を拝借しに来たらしい。


 二人目・高橋。佐藤とは隣のクラスで、俺のクラスメイトである。美術部。俺はこいつが話している様子を見たことがない。よって友達がいない(多分)。接点がないから動機はないと思うが、人が一人死んでいるっていうのに、超無表情。超真顔。怖い、怖すぎる。何故か 制服が真っ黒にアレンジ(?)されているし、なんていうか黒魔術とかで人を殺せそう。なんかずっと黒く塗られた爪ずっと噛んでいるし…。


 三人目・渡辺。犯人候補唯一の男子で、佐藤とも俺とも違うクラス。佐藤の彼ぴらしい。妥当に考えればこいつなんだろうが、仲は至って良く、皆の憧れカップルだったようだ。サッカー部、勉強も出来て、見た目は『君に〇け』の〇早くんっぽい。爽やか完璧男子だ。渡辺は、絵の具を拝借しに行った佐藤の様子を見に美術室に寄り、そのまま部活に直行。彼女が生きている姿を見たのは彼が最後だった。無残な佐藤の亡骸を前に大粒の涙をぽろぽろ零している。


「って感じなんだが。花、犯人分かったか?」


「ええ、ばっちり分かったわよ!」


「さっきと打って変わってめっちゃ機嫌良いな…」


「まね。少しばかり薬飲んだから!」


ぐ!じゃない。と、いうわけで問題編はここまで。


<読者への挑戦状>


 ここまでを読めば犯人が分か…らないかもしれないけど、分かるってことで一つよろしくお願いします。大したネタじゃないのに読者に挑戦する!ババン!って言うのすごく恥ずかしい…。


<解決編>


 花が探偵っぽく歩き回りながらドヤ顔で話し始める。


「えー、今回の事件のポイントは、なんで顔面をぶん殴ったか?ということです。だって必要ないじゃん。腹への会心の一撃で死んでいるんだから。犯人はね、顔が怖かったんだよ、佐藤さんの」


「おいおい、それはないんじゃないか? だって佐藤って誰から見ても美人だろ」


「逆、逆! 犯人からしたら佐藤さんの顔が醜く見えていたの! そう、犯人は醜形恐怖症だったのでした!」


 な、何だって~(棒)。知るか~!


「ということはだよ? 犯人は佐藤さんと同じくらいの美人ってことです。醜形恐怖症の人って自分の顔が嫌いだからね。よって犯人は…」


 無駄に溜める花。


「鈴木さんということになるわけです。女ってさ、大体同じ雰囲気、下品に言えば同じくらいのレベルの人とつるむんだよ。性格というよりかは見た目で選んじゃうの。だから、必然的に二人が同じクラスになったときに、佐藤さんが鈴木さんに声をかけたわけですね。で、鈴木さんは佐藤さんの顔が怖くてたまらなかったけど、佐藤さんは超性格良いし、自分の保身としても、仲良くせざるを得なかった。しかーし! 積もり積もった恐怖心とストレスによって、友情は殺意へと変わってしまいました、という悲しいお話です」


「なるほど。ただ、証拠がないんじゃないか?」


「証拠になるかは分からないけど、鈴木さんやたら鏡で自分のお顔確認していたでしょ? あれ、典型的な醜形恐怖症の症状なんだよ。嫌いなのにね、見ちゃうんだね」


「花。最後に一つだけ聞いていいか?」


「なんだね、ワトソン君」


「何でそんなに醜形恐怖症についての知識があるんだ?」


「それは、私も実は醜形恐怖症だからだよ! 鏡見れないタイプのね。見ようとすると割っちゃうの」


 そういって花はにっこり笑った。その笑顔はとても美しかった 。



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