第40話 麻沙美先輩のお家で④



「それじゃあ早速始めようか。トゥルルルルルルル」



 麻沙美まさみ先輩はルーレットを回しつつ、その擬音まで再生する。

 恐らくはツッコミどころなのだろうけど、こんなことでツッコんでいるとキリがなさそうなのでやめておいた。



「右手を青だね。さあ二人とも手をついて」



 まずは指示された通りに青色の丸に手をつく。

 場所はシートの真ん中寄り、つまり奥側だ。

 これは別に対面にいる伊万里いまり先輩に近付きたいからとかではなく、単純にスペースを確保するためである。

 こうしないと、後々足の指定が来た際に困るからだ。



「次は右足を黄色へ」



 いきなり面倒な指定が来た……

 というのも、丸は左から緑、黄、青、赤の順に並んでいるため、右足を黄色の丸に置くにはどうしても体を斜めにする必要があるのである。

 こうなってくると、次に左足が青色や赤色を指定されるだけで、途端に体勢が厳しくなるのだ。



「麻沙美先輩、これって同じ丸へは……」



「もちろんダメだよ。同じ部位、同じ色の指定だったとしても位置は変える必要がある。自分や他のプレイヤーが既に使っている丸も使用不可なので気を付けるように。……さて、次は左足を赤だ」



(ぐっ……)



 さっき危惧していた展開になってしまった。

 これでは体を反転せざるをえない。


 僕はなんとか体を捻り、一番右端にある赤丸に左足を着地させる。



「んっ……」



 伊万里先輩も同じ動きをしたのか、僕と同じようにブリッジした体勢になっていた。

 しかし次の瞬間、僕は伊万里先輩の方を向いたことを後悔する。



(む、胸が……)



 胸を天井へ突き出すように反り返らせているせいか、僕の視界に谷間がモロに見えてしまっていたのだ。

 見慣れぬアングルからの胸の谷間が、僕の視界に焼き付いてはなれない。



「お、いいよいいよ~。これは是非とも写真に残しておきたいな~」



「ぜ、絶対ダメです!」



「なら仕方ない。今は私の脳内画像フォルダに保存するにとどめておこう。次は……、左足を黄色へ」



「マジですか……」



「マジだぞ」



 再度左足を、今度は黄色に指定となると、体勢がかなりキツいことになる。

 またしても反転して正面になるしかないのだが……



(当たり前だけど、伊万里先輩が近い……)



 ここまでくると、次の指定で体が触れかねない距離まで近づくことになる。

 頭では理解していたが、それが視覚的に迫ってくるとドキドキも全然違ったものになっていた。



(これは、本当にエッチなゲームだぞ……)





 ………………………………



 ………………………



 ……………





 結論から言うと、第一ゲームは僕の負けに終わった。

 決まり手は、ブリッジした僕の股間に伊万里先輩の顔が乗ったことによる衝撃のせい、ということにしてある。

 実際は痛みが走ったとかが原因ではなく、股間に当たった吐息の生暖かさで僕の腰が抜けたせいなのだが、そんなことは絶対に言いだせなかった。



「次は私と伊万里だな」



 ジャンケンで組み合わせを決め、今度は僕が審判役となった。

 かなり刺激に敏感になっていたので、このインターバルは非常に助かる。

 ただ、これはこれで視覚的にヤバそうなので、なるべく見ないようにしないと体がもたなそうだ。



「えっと、次は右足を赤で……」



 案の定、盤面は中々に酷い状態になっていた。

 伊万里先輩のスカートはめくれて色々と丸見えになっているし、麻沙美先輩もブリッジ状態でショートパンツの隙間から白い生地が覗いていた。

 先程はそんなところまで見る余裕がなかったけど、俯瞰した目線だとあらゆるものが見えて大変である。

 僕も最初は目を逸らそうと努力していたのだが、気付けば、くんずほぐれつをしている二人から目を離せなくなっていた。



(ゴクリ……)



「お、藤馬君、今、生唾を飲み込んだろう」



「の、飲んでません!」



「隠さなくても、いいさ。こんな素晴らしい光景を、見てるのだから、そうなるのも、当然……、んっ……」



 無理な体勢で苦しいくせに、なんでわざわざ僕をからかってくるのか……

 そして、そんな無理をしたせいか次の指定で体力切れをおこしたようで、麻沙美先輩はあっけなく撃沈した。



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