第33話 XXXフレンドになろう!



 先日は大変な目にあったが、得られるものはあった。

 それは、伊万里いまり先輩への思いに対する確信である。



(やはり僕には伊万里先輩しか見えない!)



 麻沙美まさみ先輩には悪いけど、そこはもう譲れない。

 今日こそは、それをはっきりとさせるぞ……



「おはよう! 藤馬君!」



 僕が決意を固めた瞬間、まるで狙ったかのようなタイミングで麻沙美先輩が現れ、抱き付いてくる。

 伊万里先輩と比べれば控えめだが、それでも確かに主張のある胸の感触が背中に伝わる。

 それだけで先程の決意が揺らぎかけたが、ここでほだされてはいつもと同じだ。

 僕はなんとか気を引き締める。



「麻沙美先輩、おはようございます。それと、いい加減こういうことはやめて貰えないでしょうか?」



「おやおや、今日はつれない反応だね。ここ最近はいつも通りノーブラなんだけど、気持ちよくなかったかい?」



「っ!?」



 ノ、ノーブラ、だと……?

 確かに、ここ最近は妙に柔らかな感触がしたような気がしたけど、ノーブラだったの!?



「そうだよ? そうでもしなきゃ、伊万里のおっぱいには対抗できないからね」



「ナ、ナチュラルに人の心を読まないで下さい!」



 量より質ということか……、じゃなくて!

 本当に本当なのか? また僕をからかおうとしてるだけなんじゃ……?

 だって、ノーブラという割に先輩のアレは……



「ああ、乳首に関してはニップレスを貼ってるんだよ。知ってるかい? ニップレス」



「き、聞いたことくらいは……」



 ニップレスとは、確か乳首の上から貼る絆創膏状のシールのことだ。

 まさか、そんなものを使っているなんて……



「おやおや、赤くなってしまって。想像でもしちゃったのかな?」



「ち、ちが……」



 否定しようとしたが、それが無駄だとわかるくらいに僕の顔は熱をもってしまっていた。

 だって、想像するなという方が無理だろう。

 僕は健全な高校生男子なのだ。そんなエロい姿、想像せずにはいられないのである。



「信じられないなら直接見せようか?」



「し、信じます! 信じますから! 脱ごうとしないでください!」



 恐らく演技のつもりだとは思うのだが、麻沙美先輩の場合本当に脱ぎかねないので油断はできない。



「そりゃ残念。悩殺チャンスだったのになぁ……」



 麻沙美先輩は、渋々といった感じでたくし上げようとしていた腕を降ろす。

 もし止めていなければ……、なんて考えが浮かんだが、僕は全力でそれを振り払った。



「それで、わざわざ待ち合わせ場所より手前で待ってた理由はなんだい? 藤馬君」



 そうだ。僕は改めて麻沙美先輩に断りを入れるため、ここで待っていたんだ。



「……麻沙美先輩、先日、僕は改めて確信しました。やはり、僕には伊万里先輩以外を選ぶなんてことはあり得ません。だから、もう今後は、こういうことはやめて欲しいんです」



 麻沙美先輩の行動について伊万里先輩は寛容なところはあるが、それでもやっぱり面白くないと感じている部分はあるだろう。

 先日のディープなキスの件だって、伊万里先輩の怒りようは本物だった。

 ……その後はしっかり言いくるめられてたみたいだけど。



「成程、成程……。藤馬君はワザワザそれを言いに来たワケか」



 今までも何度かお断りはしてきたが、いつも茶化されたり誤魔化されたりしてきていた。

 しかし、今日こそははっきりとした態度で断ってみせる!



「そんなことであれば、私はとうの昔に諦めているよ?」



「…………え?」



 僕の決めた覚悟は、信じられない言葉で一気に揺らいでしまう。



(とうの昔から、諦めてた……? え、それじゃあ、なんで……)



「まあ、とうの昔と言っても先週くらいからだけどね」



「そ、そんな……。じゃ、じゃあなんで、こんなことを続けているんですか!?」



「……? 諦めることとエロい行為をすることは別問題だろう?」



 心底不思議だとでも言うような顔をする麻沙美先輩。

 しかし、そんな顔はコッチがしたいくらいであった。



「それは、どういう……」



「文字通りの意味だよ。私は、恋人になるのは諦めた。しかし、エロいことをするのは諦めたワケじゃない」



 な、何を言っているんだこの人は!

 恋人になるのを諦めて、なんでエロいことをするのは諦めないんだ!

 言ってることがおかしいだろ!


 …………いや、待て。

 まさか、そういうこと、なのか……?



「麻沙美先輩、まさか……」



「そうだね。はっきりと言おうか。藤馬君、私と〇ックスフレンドになろう!」



 やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!



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