第15話 月岡先輩と公園で……①
嫌な予感は的中してしまった。
「……先輩、これは本当にダメなヤツですよ」
「うん? 何がダメなんだい?」
「いやいや、見るからにダメでしょう! 構図的にアウトですよ!」
僕達は現在、公園のトンネル系遊具の中にいる。
高校生の僕達がこんな所に入っている時点で、完全にアウトと言っていいだろう。
「そんなことはないよ。この公園は、近隣の地域に住まう全ての人々が利用することを許可しているからね。私達が利用したって、何も問題にならない」
「そ、それは公序良俗に反しなければでしょう」
「おや? 藤馬君はこれから何をされると思っているのかな?」
月岡先輩はそう言いながら意地悪そうな笑みを浮かべる。
間違いなく、僕をからかっているのだろう。
「知りません! それより、ここ、なんなんですか?」
「何って、トンネルだけど?」
「いや、普通トンネルなら出口があるでしょう? ここって完全に行き止まりじゃないですか……」
僕が追い詰められてしまった最大の理由は、このトンネルに出口が無いせいであった。
こんな所に誘いだした時点で何か悪巧みしているのは間違いなかったのだが、最悪逃げだせばどうとでもなる思っていたのだ。
しかし、いざ入ってみると肝心の出口がなく、一気にピンチになってしまったという……
「この遊具は、回転式で別の出口に繋がるようになっているんだ。でも、回転の途中で止めてやると、こんな感じで出口を無くすことができるんだよ。便利だろう?」
何が便利なのか全くわから……、いや、想像できてしまった。
恐らく先輩は、ここを度々利用しているに違いない。用途はお察しだ。
「……僕をどうする気ですか?」
「さっきも言ったじゃないか。私が女であることを証明する、と」
月岡先輩はわざわざ僕の耳元でそう呟く。
ゾクリという快感とともに、色々な想像が勝手に頭に浮かんでくる。
なんとか自制したいところだが、この状況でそんな言い方をされれば想像するなという方が無理な話であった。
「藤馬君、君はさっき私が胸を押し当てたとき、何も感触を感じなかったと言っていたね」
「言ってませんよ!? 誤解です!」
「おっと、大声はNGだよ。困るのは多分、君の方なんじゃないかな?」
「っ……」
確かに、いくら僕が童顔とはいえ、この状況で不利なのは間違いなく男の方だろう。
どう思われるかを抜きにしたって、最悪通報されればお互いに困ることになる。
可能であれば、誰にも見られないに越したことはない。
「イイ子だ。さて、じゃあまずは、お互い上着を脱ぐとしようか」
「ぼ、僕もですか!?」
「おや? 女の私にだけ脱がそうと言うのかな?」
「いや、それ以前に月岡先輩にも脱がないで欲しいんですが……」
「それは無理な話だよ。ここまで来たら、脱ぐのがマナーだろう?」
そんなマナーはない、と言いたかったが、月岡先輩は僕の言葉を待たずに脱ぎ始めてしまう。
抵抗は無駄のようなので、僕も仕方なくブレザーを脱ぐことにする。
「うん。やはり藤馬君はイイ子だ。では早速、ガバッといくよ」
月岡先輩はそう言って、文字通りガバッと抱き付いてくる。
その瞬間、フワッとした甘い香りと柔らかい触感、そして耳に響く切なげな吐息が僕の脳を
(こ、これは、一体……?)
こんなことを言うとクラスメートに殺されそうだが、僕は普段から初瀬先輩に抱き付かれているため、ハグには慣れている方である。
しかし、月岡先輩のハグは、なんというかその、申し訳ないのだけど、初瀬先輩のハグよりも心地が良かった。
「おや? もう少し
「いえ、その……」
慣れているというのは間違いではないのだが、僕が固まっている理由はただただ疑問に思ったからだけだった。
「……ああ、もしかして伊万里とは違った感覚だったからかな?」
「っ!? そ、そうです……」
視覚と味覚以外を柔らかく刺激する月岡先輩のハグは、なんと言うか、極上のシーツにくるまれたような感触だった。
いや、決して初瀬先輩が極上じゃないというワケではないのだが、月岡先輩のは、そう、干したての布団のような安心感があるのだ。
「それは仕方のないことだよ。何せ伊万里と私とでは年季が違うからね。単純に抱きしめるといっても、技術があるのさ」
スリスリと柔らかく擦り付けられる体に背徳的なモノを感じつつも、無条件で受け入れてしまいそうな心地良さ。
これが熟練のなせるワザだとでもいうのだろうか……
「さて、これで少なくとも、私の胸が本物だということはわかってくれただろう?」
「いや、最初から疑ってなんて……」
「では次のステップだ」
月岡先輩は聞く耳を全く持たず、言葉を被せてくる。
ていうか、次のステップってなんだよ……
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