127話 薄い本は己が性癖の鏡なり


 朱音さん……。

 昔ゆうくんに告白された女性……。

 今、彼女は何を思っているのだろう。


 朱音さんについて知ればもっとゆうくんに近づけるかも知れない。


 そんな思いを胸に、朱音さんとの休日が始まった。


 始まったのだが……。


「え? 朱音さん、ここって……」


「うん、久しぶりに行きたかったんだ」


 乙女ロード!!


「朱音さんもゆうくんと同じでアニメとか好きなんですね」


「うん。でも全部が全部、ゆーくんと同じってわけじゃないかな」


「そ、そうなんですね」


 朱音さんと共にアニメショップへと入っていく。

 正直、初めて入るかも知れない。

 これまでの人生で私はアニメとか漫画に深く関わることがなかった。そう言う知識がついたのはゆうくんと知り合った後だったし。

 ドラ○もんとかコ○ンとかしかアニメを見てなかったな。


 店内に足を踏み入れるとアニメグッズやフィギュア、CD、漫画などが陳列されていた。

 まるでゆうくんの部屋を拡大したようだった。

 しかし、朱音さんはそんなものには目をくれず、店の奥の方へ向かっていく。

 何か目当てのものがあるのだろうか。

 ついていくと薄い本がが多く立ち並ぶコーナーで朱音さんは立ち止まり、何かを探していた。

 雑誌……? いや、漫画かな。

 漫画にしては薄い感じがするけど。

 そう言えばゆうくんの部屋にも沢山あったな。

 エッチなものばかりだったけど、ここに置いてあるのもそんな感じなのかな。

 あ、試し読みができるやつがある、どんな感じなんだろう。


 興味本位で手に取り見てみると……。


「ん!!///」


 そこには男同士でその……ちょっとエッチなことをしている状況が描かれていた。


 ん? あれ? これどう言うことだ???


 他のも手に取ってみると、みんな男同士で抱き合ったり、なんか如何わしいポーズをとっているものばかりだ。

 まさかこれが巷で聞く"BL"というものか。

 朱音さんにそんな趣味があったなんて……。

 でも、ゆうくんの部屋にも女の子同士がイチャイチャする薄い本とか漫画があったし、オタク趣味の人はそういうのが好きなのかも知れない……それに何だろう。最初はちょっと驚いたけど、でも読んでみれば意外と悪くない……かも?


 チラチラと薄い本を眺めていると、


「ふふ、何か気になるものでもあった?」


 ひょっと隣から朱音さんが顔を出す。


「うわっ! 驚かさないでくださいよ」


「ごめんね。顔を赤くして見ていたのが可愛くてさ」


「ははは、なかなかこういうの見るのは初めてで……朱音さんは目当ての本見つけたんですか?」


「うん! これ……」


 そう言って朱音さんが見せてきたのは、イケメンな男の本ではなく、"エーリアン✖︎プレデター"が描かれている本だった。


「へぇー。普通のSFものもあるんですね」


「普通? なのかな、みんなからはよくアブノーマルって言われるけど……」


「え?」


「え?」


 お互い顔を見合わせた。 

 BL……ボーイズラブ……エーリアン……プレデター……まさかこれ……!!


「朱音さん……これって……」


「ふふ。エリ✖︎プレの同人誌……クリーチャー同士の合体って萌えるよね!!」


 可愛い顔を浮かびながら朱音さんはその同人誌を手にレジへと向かった。


「エーリアンとプレデターが……え? ちょ……え?……」


 まずい……益々、朱音さんがわからなくなってきた。


 ひとまず私は研究材料として、

 "先輩と後輩"もののBL本を一冊購入した。


 

 

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