80話 水着を乗り越えた神原


「変なのに絡まれたね!」


「海水浴シーズンはああいうナンパ野郎は多いだろ」


 香乃に言い、俺はレジャーシートに寝転びながらアプリゲームを始動した。

 

 海の方は人が多いし、こうして日差しを浴びながらグダグダするに限るぜ。


「そ・れ・よ・り」


 くつろいでいると西園寺さんが突然、俺の目の前に立つ。


「どう? 私の水着姿。最新のモデルのデザインなんだよねーー」


 そう言い、リボンのついた白いビキニを見せびらかす。  

 てかめちゃくちゃスタイル良い。

 うーーん。


「可愛い、可愛い」


「反応うっす〜〜」


「なら、私は! 私は!」

 

 次は香乃か。花柄のビキニを見せびらかす。  

 少し派手な水着と胸のデカさがマッチしていていいな。

 うーーーん。


「いいと思う」


「どんな感じ! どんな感じ!」


「相対的に」

 

「相対的にって意味わかんなーい。なら湊ちゃんは?」


「え、ちょ……」

 

 チラッと見る

 黒いフリフリした水着か。

 胸の小ささを隠している感じがしているが、それを加味してもいいな。

 うーーーーん。


「ま、いいんじゃね?」


「上から目線が腹立つな……」


「ゆーくん、ゆーくん、私は?」


 朱音先輩はピンクのビキニの上に白いパーカーか。

 白い肌とピンクの水着が清楚さを表していていいな。

 うーーーーーん。


「きれい」


「ありがと」


 にしても、気になるのは。

 チラッと姫咲さんの方に目をやる。


「?」


 大人っぽい水着……黒い下着みたいなやつに薄いロングスカート。 

 エロい。この一言につきるな。


 うーーーーーーん。


「ぶはっ!!」


 思わず鼻を押さえた。 

 やばいやばいやばい。この空間、童貞の俺にはキツすぎる。

 普段ですらギリギリ平然を装っているのに、水着はえぐいって!

 美女5人の水着姿は童貞殺戮兵器と言っても過言ではない。


「ど、どうしたの……?」


「いや、べ、別になんでも……」


 駆け寄ってきた姫咲さん。 

 そのお胸が俺の目と鼻の先に……。

 これは本気でやばい……!!


「ぶっは!!!」


「神原くん??」


 鼻から血を流しながら俺はその場から離れてトイレに向かった。


 トイレの個室に入り俺は息を整えていた。


 ふーー。危なかった。あそこで尊死する所だったぜ。

 しかしこのままではやばいな。意識しないと言うのが無理がある。これが完全他人ならなんの問題もないが、好意を持たれていると言う前提があると話が変わる。

 めちゃくちゃドキドキする。

 なぜなら俺は水着が大好きだからだ!

 ギャルゲーとかアイシスでも水着イベントは必ず周回する!

 部屋に飾ってあるフィギュアもほとんどが水着キャラだ。

 それぐらい大好きだ。

 

 そんな俺にとって彼女達は目が毒すぎる。

 なんとかしないとな……そう言えば海の家に……。


 名案を思いつき、俺は海の家へ行き"あるもの"を買った。



「あ、ゆうくん、どこ行ってたのって……?」


「先輩?」


「神原くん、それ……」


 西園寺さん、星川、姫咲さんがジーと俺を見る。


「どうすか? 初めて買ったけどさ」


「かっこいいと思うよ」


 とニコニコして言う朱音先輩。


「うんうん! イケてるよ! ゆうちゃん!」


「ゆうちゃんではない! "水着を乗り越えた神原"だ!」


 安物のサングラスをかけながらみんなに宣言した。


 これなら直視しないから問題ない!

 

 しかし。


「うーん……ねぇ、湊ちゃんこれはちょっとねぇ……」


「ものすごく似合ってないですね」


 西園寺さんと星川には酷評だった。

 そんなのは自分がよくわかっているがこうして言われると傷つくな……。


 姫咲さんは……。


「花○院……ぷっ」


 元ネタを理解し、少し笑っていた。


 やれやれだぜ……。

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