78話 答え
「俺は……」
4年越し朱音先輩の告白。
またあの時のように先輩は真っ直ぐ俺に気持ちを伝えた。
まだ俺のことを想っていたなんて、すごいな……。
俺は先輩から逃げていたのに。
だけど、いや、だからこそ……
もう逃げちゃダメだ。
西園寺さんや香乃、星川に気持ちを伝えられて気づいた。
相手の気持ちに対し、誤魔化すことが一番相手を傷つけることだって、だから俺も本心で先輩と話そう。
嘘偽りない気持ちを……。
「正直……嬉しいです」
「ゆーくん」
「俺みたいな奴を好きでいてくれて。先輩のような人と付き合えたら楽しいだろうなって心の底から思います」
「だったら———」
「でも……すいません」
「え……」
「ちょっと、今は先輩の気持ちに答えられそうにないです……」
「どうして?」
顔を覗き込むように聞いてきた。
俺は一呼吸終えて先輩に伝えた。
「ここ最近、色々なことが起きすぎて気持ちの整理が追いついていないんです。だから今は誰とも恋愛する気がないんです。すいません」
そう言い、丁重に断った。
個人的な理由……幻滅されるか?
しかし、
「そっか……そういう感じなんだね」
「え?」
朱音先輩は意外にも平然としていた。
「逆によかった。安心」
「な、なんでですか?」
聞くと先輩はニコニコして、告げた。
「だって他に好きな子がいるのかと思ってたから」
「いや、そんなのいないですよ。ハハ」
まあ、今日の様子を見ていると確かにそう思うか。
「へーー。じゃあその中でも私、可能性あるね」
「ハハ……え?」
今なんて……?
「はぁ〜〜安心したら眠たくなっちゃったな……それじゃあおやすみ」
そのまま俺のベッドで先輩は寝た。
「ちょ、ちょっと!」
しゃーない、俺は先輩が寝るはずだったベッドで寝る……あれ?
体が動かない……。
見ると朱音先輩がとてつもない強い力で俺の腕を掴んでいた。
男の俺でも振り切れない……あんな華奢な体なのに、どんな筋肉しているんだよ……。
うう、仕方ない。朱音先輩が寝るまで待とう。
「…………」
先輩の隣で横になる。
しかし、改めて思うとすごいことになったな。
西園寺さんに始まり、香乃、星川、姫咲さんはよくわからないけど、そして朱音先輩。
こんなにも女性と関わりを持つなんて。
ギャルゲーばかりやっていた今までの生活からは信じられないな。
人生の三度あるモテ期、いや前世と前前世と前前前世の分も一度に集約したようなこの状況。
付き纏われて大変だったけど、今日みんなと遊んで改めて思った。
すごく楽しかったな。
このままこの関係がずっと続けばいいなと思うけどそれを思っているのは俺だけだろう。
いつかは答えを出さないといけない。
誰の好意を受けるか……それとも……。
あーー童貞の俺には荷が重いって。
「はぁ……」
溜息を吐きながら今後について考えていた。しかし、程なくして俺は寝落ちしてしまった。
こうして長い長い旅行1日目は終了した……。
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