21話 錆びついたマシンガントークで今を打ち抜こう
「「お隣さん!!」」
街コン会場を出たすぐに俺はお隣さんと出会った。
「あ……えと……」
急にモジモジするお隣さん。
お隣さんとは言ったものの、会うたびに軽く挨拶どころか会釈しかしてなかったからな……急に声をかけてよかったのかな。
でも街コンで敗北をきした後でさらにこんな所であったら無意識に声を掛けたくなるよな。疎外感のあとの顔見知りが現れる安心感には勝てんて……。
しかしなんて話そう……お隣さんも困ってるし……あれ、そう言えば、お隣さんこの街コン会場の前で何してたんだろう? まさかこの人も……。
「あの……」
「はい!」
お隣さんに声を掛けられて声が裏返った。
「もしかして……参加してました?……」
恐る恐る尋ねられる。
主語がなかったが恐らく街コンだろう。
「あ、はい……」
そう答えると急にお隣さんが顔を真っ赤にする。
何がどうなってる……?
だけど一人で立ってるってことはこの人もうまくいかなかったってことなのかな……。
「あなたも参加してたんですか?」
「!!」
お隣さんの体がわかりやすくびくついた。
そんな驚かんでも。
「あ、いや……その……」
回答に困っているようだった。
反射的に聞き返してしまったが、別に隠す必要なんてないだろ。明らかに会場の前にいるのに。
無駄にオドオドしている彼女。ジーと見ていた俺と目が合うとさらに顔を赤くし、突然。
「あ、私帰ります!!」
勢いよく走り出した。
しかし。
「うわっ!」
ハイヒールだったせいかすぐ転んだ。
転んだ拍子に彼女が持っていたカバンから一冊の漫画が出てきた。
「ん、これは……」
「あ、違うの……これは……」
手に取り確認する。
そう、これは……!!
「"魔法少女ユリカルユリカ"の新刊じゃん!!!」
「え……"ユリユリ"知ってるの?」
「知ってるも何も俺の愛読本ですよ」
「え?」
「え?」
再びお互い顔を見合わした……。
それから数分後……。
「やっぱ、あの敵だったユーリさんがまさかユリカの姉でしかも時間操作系能力を持っていたのは驚きましたよね」
「うん……それにその後の姉妹の共闘も熱かった……あそこだけバトル漫画みたいな演出ですごい好き……」
「俺はあの後の姉妹のイチャイチャシーンが最高に好きですね! あれでご飯3倍いける!」
「あーー! わかるぅぅーー。あそこは最高にエモい!!」
お互い意気投合し、駅前のベンチでオタトークを始めていた。
「いやーーまさかお隣さんも"ユリユリ"見ていたなんて驚きっすよ」
「私も……だけど……なんとなく知っていた」
「え?」
「だって……たまに隣からユリユリのオープニングっぽいものが聞こえてたから……」
「うるさかったのならすいません。でも、自分、アニメは少し音量大きくしてみるタイプなんで!」
ドヤ顔で言うとお隣さんはクスクスと笑った。
「君とは……話が合うね」
「俺もここまでユリユリの話があったのははじめてです……あ、えーと」
そう言えばまだお隣さんの名前を聞くのを忘れていた。
自己紹介なく好きな話で盛り上がれるのはオタクの特権か。
俺が名前で困っていることを察し、お隣さんが自己紹介する。
「あ、私……
「俺は神原 由です」
この時はじめて、近い存在だった彼女の名前を知った。
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