アキバで幼馴染みと再会し求婚された件について

9話 アニメショップ回るとき人生で一番生き生きとしている


 スマホ、財布、バッテリーの充電器、それにBluetoothのイヤホン……よし。


 持ち物の確認をする。

 この4つさえ有れば俺は無人島でだって暮らしていける。

 

 ………………いや、ギャルゲー及び百合漫画もないときついな。


「さてと、いきますか!」


 秋葉原!!!!


 オタクの聖地秋葉原。

 以前は、歩行者天国に客寄せをしているメイド、三角頭巾にリュックを背負ったオタクが行き交っていたが、今は全然違う。

 外国人観光客に、スーツを着たビジネスマンが多く行き交うようになった。

 ビルも多くたったし、会議をするにはちょうどいい場所なんだろうな。


 だけど日本のサブカルチャーの聖地としては今も健在。

 ここには色んなお宝が眠っている。

 特に何が欲しいものがなくても見るだけでも楽しい。

 

 俺の最寄駅から約1時間ほどかかるが、月に2、3回訪れている。

 それほどここは俺にとってオアシス。


「よしまずは!」

 

 着いて早々、俺は早歩きで改札を出てある場所に向かう。

 まずは大本命の百合本を買うため"アニメイド"へ。特典は何としても手に入れたい

 そこから最近発売された"アイドルシスターズ"のほのかちゃんの8分の1スケールフィギュア!! それを手に入れる。

 しかし……それにはある条件があるんだよな……。


 アニメイドで百合本をすんなり買い、俺はほのかちゃんを探した。


 そして見つけた。


「あった!」


 だが……単純にお金を払ってもそれは手に入らない……なぜなら……。


「クレーンゲーム……」


 格ゲーと音ゲーをやるためによくゲーセンには行っていたが、クレーンゲームはあまりしなかった。

 だってあれ普通に難しいだもん。

  

 苦手意識があって今まで手を出していなかったが、ほのかちゃんのフィギュアが出たなら話が別だ。

 是が非でも手に入れる!

 

 ここで無粋な馬鹿は「中古で買えばいいじゃん」とか言うがそんなんに意味があるか?

 お前は好きな子が中古でもいいのか?

 良くない、誰だって新品……はじめてが自分の方ががいいはずだ!!

 

 ということで俺はほのかちゃんのはじめてを手に入れる!!!


「いざ!!!」


 台の前に立ち100円を多く持ち、戦いに望んだ。


 20分後………。


「全然進まねぇ!!!」

 

 思わず声が出た。

 あれ? 「いざ」と言ってから何一つ前に進んでいないんだけど。

 全然ダメダメな俺を見てゲーセンの店員さんが何度か箱を移動させてくれたのに、なぜか戻っているし……てかこのアームがガバガバなんだよ!! 今の俺の財布のように。こんなんでどうほのかちゃんを持ち上げればいいんだ……。


 やめるか……いやでももう4000円近く溶かした……後戻りはできない。

 ここで引いたら男が廃る!

 しかたない。


「待ってろ! ほのか!!」


 俺は5度目の両替をしに向かった。


 しかし——。


「え……」


 戻ったらほのかの姿はなかった……。


「そ、そんな……」


 あともう少しだったのに……。 

 こんなのってねぇーよ……ちくしょう。


 俺はその場で四つ這いになった。

 その時……。


「はい」


 目の前にほのかちゃんのフィギュアが現れる。


「ほのかちゃん!」


 思わず手を取る。

 でも誰が………?

 見上げるとそこには……。


 肩まで伸びた綺麗な黒髪に、ゲーセンには似つかないスーツ。そしてとても見慣れたピンクの髪留めに……顔……。


 どうして……?


香乃かの……」


「久しぶりだね。"ゆうちゃん"」


 このカオスな街で俺は6年ぶりに幼馴染みと再会した。

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