わたしと恋

阿刀田夜長

失恋

「告白したけどダメだった」

「そう、残念だったね」

「女の影はないと思ったんだけど、相手がいたわ」

「へえ」

「『自分』と付き合ってるんだって」

「ああ、今や別人格との婚姻も認められているからね」

「それは見抜けなかったわ」

「奪っちゃえ」

「無理よ、そんな度胸わたしにはないわ」

「えー」

「えーじゃありません」

「じゃあおれはどう?」

「幼馴染でしょ。そんな目で見れないわ」

「じょうだんだよ。まじにするなって」

「だと思った。つかれた。わたしもう寝るわ」

「おやすみ」

「……眠ったか。おれは本気なんだけどな。彼女はやっぱり男の体を持った男が好きなんだよな。おれもおれの体を持って生まれていればこの恋路もちがっていたかな……なんてな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしと恋 阿刀田夜長 @muscleism

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る