第25話 どうして② ※ 愛莉視点


 ふっつー

 の、女だった。

 別に可愛くないとは言わないけど。

 私の信者を辞める程かな、とは思う。

 

 そういえば先週、彼氏に嫌な事を言われたんだった……なんて思いついて、その日のうちに智樹に告白してみた。


 智樹は動揺してたけど、私の涙に息を飲んで、目を逸らせずに見つめて来て……


『本当に俺でいいの?』


 言われて私は微笑んだ。

 やっぱり私が一番なんだって。智樹、信じてたわよ!


 付き合ってみたらやっぱり智樹は忠犬みたいな存在だった。何でも言うことを聞いてくれて思い通り。

 でもそれだけだとちょっと物足りなくて……足りないところは他の男の子と遊んだりしてた。

 智樹は気にしないから大丈夫。軽い気持ちなら浮気のうちに入らないでしょ。


 私を自由にしてくれる智樹、大好き!




 けどそれも智樹が大学を卒業するまでだった。


 専門学校を卒業した私の方が就職が早かったけど、仕事は遊びの延長みたいなものだったから、私の生活は特に変わらなかった。

 面倒な仕事は誰かが代わりにやってくれるし、可愛くお礼を言えば大体の事は許してもらえた。


 智樹は悩んだ挙句私と同じ職場に来た。

 他の男ならアウトだけど、智樹ならセーフ。だって私のする事にうるさく言わないものね。


 けれど……


 会社勤め二年目だからか、周りの言う事がちょっと変わって来た。

 後輩が出来たんだから、もっとしっかりしなさいとか、手本になりなさいとか言われるようになって……そんな事急に言われても……


 智樹もなんだか忙しそう。

 もう婚活とかしちゃおうかな。うちの会社はお給料低いから智樹は論外。やっぱお金持ちがいいな。私みたいに可愛い子ならいけるよね。


 会社の人には、智樹とは幼馴染だけと、同居してるとは言ってない。総務はその手の個人情報は漏らさない筈だから、誰もこの事は知らない。

 私はせっせと婚活に励む。

 二人の将来の為の貯金にも手を出した。


 ……将来の為の貯金なら、いいよね? 私だって出してるんだし。まあ智樹の方が多いけど、男の方がお給料多いんだから当然よね。


 だけど、

 何故か上手くいかない婚活。

 サイトにも登録したのに。


 会って話すと皆離れていくのはどうして?

 ちょっと家事が苦手なだけなのに……

 そんなのはハウスキーパーを雇えばいいじゃない。


 でもハウスキーパーを雇うなら共働きじゃないと、って……お金持ちでもケチな人は嫌だわ。


 あとは若い子が好きとか歳いってる社長。見た目も体裁も悪すぎて論外。お金目当ての結婚みたいじゃない? 

 いや、それもあるんだけど……愛もあった方がいいでしょ。そうすると見た目の好みも大事になるから条件は絞られてくる訳で……


 なんて言うか……

 何で智樹うちの会社来ちゃったの?

 今更ながらに思っちゃう。智樹なら大企業とか公務員とか目指せたんじゃないかな。そしたら私、今こんな苦労してないのに……はあ──




 そんな訳で私は忙しくて、それを理由に家事をサボってたらある日智樹に怒られた。


 ……何急に?


 今まで何しても怒らなかった智樹が……何なの……?

 私は訳が分からないまま、智樹の去っていく背中を呆然と見つめていた。

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