詩「春の夢」

有原野分

春の夢

海の向こうの

素朴な町は

いつかの夢より

果てしなく

空を飛んでも

泳いでも

走り出しても

まだ遠い

遠い国の

青い目をしたきみは


いつだって春の夢を見ている


ぼくはまだ

きみに出会う

約束をしていないけど

いつか出会う

そのときまでに

生粋の日本人に合うような

地味な柄の折り畳み傘を

嘘でもいいから

用意しておいてくれると

ぼくは雨の日でも

安心して

きみに会いに行けるんだ

いつかの春

梅が咲く

雨に濡れて

うぐいすが

鳴く頃に

約束を


切るよ

長い髪を

今年こそは


春の夢

梅の花を

胸の高さに

きみに会いに

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詩「春の夢」 有原野分 @yujiarihara

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