第33話 母、九十歳になる

 二〇二〇年三月二十七日、母はついに九十歳(卒寿)の誕生日を迎える事が出来た。最初は八十八歳まで生きるのが目標でそれを無事に迎えた後は今度は九十歳まで生きるのが目標になっていた。毎日「あこが痛い、ここが痛い」と不調を訴える事が多く「長生きはようせんじゃろう」といつも言っていた母だがなんと九十歳の目標を達成する事が出来たのだ。めでたし、めでたし。


 丁度母の誕生日の二日前に娘家族が来て『すずちゃん 九十才の おたんじょう日 おめでとう』のメッセージを画用紙にカラフルなペンで書いてくれた。それを壁に貼ったのをバックに母と記念撮影をしてお祝いした。ゆいとゆあ(孫)がお祝いの絵もプレゼントしてくれた。

 母の誕生日の二日後には次男家族がやって来たので又もや画用紙に書いたメッセージをバックに記念撮影をした。次男家族がケーキを買ってきてくれたのでケーキを食べながらささやかにお祝いも出来た。私は長寿枕と靴をプレゼントした。姉達からも塗り絵やお祝いメッセージが届いた。

 この頃丁度、新型コロナウイルスが世界的に発生し拡大して今まで経験した事もない緊急事態で小中高と休校になっており色々対策が取られている中、無事に誕生日を迎えられた事はとても有難い事だ。特にお年寄りが重体になる確率が高いというので今後これ以上拡大する事なく早く終息してくれる事を祈るばかりだ。


 最近の母は「もう長うない、長生きはできん」が口癖になっている。しかし、九十歳まで生きているのだからもう充分長生きだと私は思っている。

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