第5話 留守中の転倒
翌日一月八日、この日は入院中の父が意識障害を度々引き起こしていた為入院中の先生の紹介で専門の病院で検査を受ける予定だった。退院後初めて母を一人にして外出する事になるので一抹の不安はあったものの今後私が仕事に出かけてる間はいずれにしても母は一人になるのだからやむを得ないと思っていた。母も「しゃあないよ。ご飯を用意してくれたら一人で何とかなるよ」と言ってくれていた。
八日の朝、台所のテーブルに昼食を用意し午前九時前に父が検査を受ける病院に向かうため家を出た。「午後二時頃には帰れると思うよ」と母には伝えていた。父の検査は予約してあるにも関わらず予想以上に時間がかかった。検査の結果後も担当の先生と今後の事の相談もしたりしたので家に着いたのは午後三時前だった。
「すずちゃん(母の愛称)遅くなってごめん」と言いながら家の中に入ると母が台所と自分の部屋との間の所でうづくまって唸っていた。驚いて「どうしたん?」と駆け寄ると「転んで足が痛くて動けん」と言う。テーブルに用意していた昼食は手付かずだった。支えながら動かそうとすると「痛い、痛い」と泣き叫ぶ。これは骨折しているに違いないと直感し、取るものも取り敢えず直ぐに救急車を呼んだ。痛がる母に事情を聞くと午前十一時頃水を飲もうとして台所に行き転んだと言う。それからは「痛くて痛くて動けんかった」と言う。何とか炬燵のある部屋に行こうとしたが動くことが出来ず四時間かけてやっと台所と部屋の間まで移動したようだ。呼んでも誰も来んし只々私が帰って来るのを待っていたと言う。私は四時間もの間痛みと寒さに耐えていたのかと思うと母に申し訳なくて涙が止まらなかった。本当にショックだった。
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