深い海に沈む

七瀬 橙

第1話 激しい雨が降る

 激しい雨が打ち付けていた。駅を出てすぐに降り出した雨はまたたく間に大粒で激しいものとなり、わたしは悲鳴に近い声を上げながら走った。

 雨はアスファルトを打ち付け、跳ね返っては足元を濡らした。そのとき、お守りのように握り締めていた携帯電話が雨で濡れたわたしの手から滑り落ちた。

「あっ!」

「壊れてないかな? あと少しだからがんばれ!」

 そう言って素早く携帯電話を拾ってくれたその人は、その勢いのままわたしの手を取った。わたしは力強く手を引かれながら、その背中を追った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る