受刑者無人島送り計画と女官僚の野望

深谷惣太郎

第1話 序章

 西暦2053年、日本は未曽有の不況の真っ只中にあり、窃盗や大規模詐欺、金銭をめぐる殺人など、犯罪件数は過去最多を大幅に更新した。加えて、労働力として入国させた外国人による犯罪も多発し、全国の刑務所は囚人であふれかえった。

 なかでも、東京の各所は軒並み収容人数の2倍以上という超飽和状態となる。ストレスのたまった囚人たちは次々と問題を起こし、その対応に追われ疲労困憊した看守の一人が過労死したのを契機に、次々と看守たちが職を辞していった。すると、看守が少ないのをいいことに脱獄をはかる者が次々と現れる。

 真っ先に刑務所の数を増やさなければならない。しかも現状の倍の数にだ。しかし、不況による税収の大幅減や警察官の増員、生活保護費の増大などで財政がひっ迫しているうえに、早急の建設が必要とあれば、そんな無茶な話はない、ということになる。ついに都知事は、窮余の策として囚人の無人島送りを決断した。この決断を促したのは、法務省のある女性エリート官僚の綿密なプランと助言によるところが大きかった。

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