第3話
復讐を誓ったサリナには、サキュバスの能力を使うことにもう全く躊躇いはなかった。
屋敷に連れて来られて初めて顔を合わせた義母や義妹から向けられる蔑視の視線も気にならなかった。二人はどうやってサリナを虐めてやろうか楽しみにしてるみたいだが、サリナにとってはどうでも良かった。どうせコイツらには何も出来ないのだから。
実の父親から向けられる情欲にまみれた視線には辟易した。この男はサリナの母親を魔族と蔑んでおきながら、母親のことはしっかり抱いた。
サキュバスである母親は当然ながら見目麗しく、闇夜のように黒い艶やかな黒髪に魔族であることを表す紫の瞳。傾国の美女と呼ばれる程の美貌にこの男は欲情の限りを尽くした。
サリナが産まれてからは愛人の所に通う頻度の方が増えたが、それでも時々思い出したかのように母親を抱きに来ていた。幼いサリナはそんな姿を見て吐き気を覚えた。
そして今、母親そっくりに美しく成長したサリナを見て、また欲情しているのだろう。ケダモノ...いやケダモノ以下だ。サリナはまた吐き気を催した。
◇◇◇
早速、義母と義妹の二人が躾と称してサリナを地下室に連れて来た。ここで折檻するつもりなのだろう。拷問部屋とでも呼ぶべきか。部屋の中には鞭や蝋燭、水風呂に暖炉、タライに火かき棒など様々な責め苦を与える設備が整っていた。
義母が鞭を構えてサリナに服を脱ぐよう命令する。傷が目立たない背中を鞭打ちするらしい。サリナは大人しく従った。
義母がサリナの背中に鞭を振り下ろす。何度も何度も何度も。サリナの背中の肉が裂け、血が滴り落ちても止めることはない。
やがて息が切れたのか、肩で息をしながら義母は叩くのを止めた。次に義妹がサリナに向かう。サリナと一歳違いだというこの義妹は、義母にそっくりだった。
義妹はサリナの髪を掴んでタライに張った水の中に顔を押し付けた。窒息しそうになる直前で顔を上げる。それを何度も何度も繰り返す。最後には水風呂の中にサリナを突き落として上から抑え付けた。苦しくなって浮いて来るサリナを何度も何度も抑え付けた。
その間に義母は暖炉に火を入れ、火かき棒を突っ込んだ。そして水風呂から上がったサリナの背中に火かき棒を押し付けた。悶絶するサリナを見て、二人して嘲笑っていた。
そんな愚かな二人を、サリナは離れた所から蔑んだ目で見下ろしていた。
そう、二人がサリナだと思って散々甚振っていたのはサリナの作り出した幻だったのだ。サキュバスの能力の中には、このように人を欺く力があることを二人は知らなかった。
満足した顔で引き上げていく二人を見送ったサリナは、
「バカなヤツら」
と、吐き捨てるように呟いた。
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