第4話 商業ギルド

「美味!」



 フードの少女は顔を輝かせながらポッポ焼きを頬張る。無論フードで顔は見えないが、一心不乱に食べるその姿は少女のその顔は想像できた。



「このポッポ焼きというものは一体どういった食べ物なんじゃ?こんな美味しい食べ物始めて食べたのじゃ!」



「これはポッポというモンスターです。小鳥型のモンスターですね。通常の小鳥に比べて骨や筋が少ないので、こういった鳥料理に使われる事が多いです。このポッポ焼きはまず下処理をした後、串で刺し、塩を振って、醤油ベースのソースで塗り焦げないように回しながら焙るとできます。骨が少なく丸ごとそのまま食べれるので見た目はあれですか、値段以上の満足感が得られますね。こういった屋台では定番の料理です」



「ふむふむ。覚えたのじゃ!さっそく帰ったらシェフに作らせるとしよう!」



 アレスはシェフは相当困るだろうな。と、思ったがあえてそこにはふれなかった。



「所でどこか見たい場所などありますか?」



「うーむ、正直この街の事はあまり知らないのじゃ。つい最近ここについたばかりでのう」



「そうですか。では、まずはこの街、ヴェツィは6区に分けられています。ここは商業区になります。今日一日で全ては見るのは無理なのでいくつか絞りましょう」



「うむ、頼む」



「はい、ではまず周りを歩きながらこの商業地区を案内します。商業ギルドはご存知ですか?」



「商業ギルドとな」



「はい、この街の商業組合みたいなものです。各都市ごとに支部はありますが、この街にある商業ギルドもその支部の一つですね」



「その商業ギルドは何をしている場所なのじゃ?」



「基本的な商業同士の組合ですね。いろんな商売のルールや情報共有してる場所です」



「アレスもその商業ギルドやらの一員なのか?」



「そうですね、まだ若輩者ですが、普段は雑貨屋をしています。小売もしてますが、質屋に近いですかね」



「ふーん、そうなのか」



 そんな事を話していると、商業ギルドについた。



「ここが商業ギルドなんじゃな。古風な感じじゃのう」



「入ってみますか?」



「いいのか?」



「ええ、私も商業ギルドの一員ですから。客人という事で入れば大丈夫と思います」



 商業ギルドの扉を開けた。



「あ、アレスさんいらっしゃい」



「ミアさん。こんにちは」



「今日はどのようなご用件で、あらそちらは?」



 アレスの隣にたつフードを被った少女を見て顕現そうな顔をする。



「ちょっとこの街を紹介していてね。今は商業ギルドを紹介しているんだ」



「そうなんですか」



 ミアはフードの少女向き直った。



「こんにちは。えっと」



「シャルじゃ」



「こんにちは、シャルさん。こちらは商業ギルドになります。商業ギルドはご存知で?」



「アレスから少し聞いたのじゃ。商人同士の組合みたいなものじゃろ?商売のルールや情報共有をしている」



「そうですね。主に商業ギルドは市場の安定化を目的に活動してます。商人同士の原価引き下げ、価格制限などのルール作りや組合同士の指導と教育、情報の収集や提供などもおこなっています」



「ほう、いろいろやっておるのじゃな。ふむ、少し気になったのじゃがなんで値段が下がるのを防止するんじゃ?価格が下がる事はいい事だと思うのじゃが」



「いい所に気がつきましたね」



 それを聞いたアレスは生徒に指導するかのように手振りを使いながら説明する。



「もちろん消費者にとっては安いのが1番です。シャロンも先程ポッポ焼きを食べましたよね?」



「うむ、あれは美味であった」



「この消費者というのはポッポ焼きを食べたシャルになります。ポッポ焼きでもし価格競争が起き1本30ダットまで落ちたとしましょう。」



「1本60ダットだから30ダットなら半額じゃのう」



「このポッポの原価は20ダット。そこから人件費を引いたら利益はほとんど残りません。低い生産と悪い労働条件という悪循環がおこり、最終的にポッポ焼きの価格競争を行った商店は共倒れになります。こういった状態を防ぐために商業ギルドでは商人同士でルールを作ったり知識の共有、技術発展などをおこなっているということです」



「なるほど、だからルール作り、規則が必要なわけじゃな」



「そういうことです」



「アレスさんありがとうございます。では次に商業ギルドの内部を紹介します。このギルドは二階建てで私たちが各種手続きなど窓口を担当しております。一階にはロビーといくつかの商談用の談話室があります。二階は事務室になっていて商業ギルドのギルド長の部屋はここにあります」



「なるほどなるほど」



「ああ、そうそう今日はこの子を街の案内しようと思ってね。ミアさん何かいい場所あるかな?」



「中央区にある政治の中心である宮殿は1度見たほうが良いでしょう。港にはこの国最大の造船所があります。この街の中心部である広場では露天や商店が立ち並び一度行ってみるのはいいかもしれません」



「シャル何か気になる場所ありましたか?」



「全部きになる。特に宮殿というのは気になるのう」



「ではまず一つずつ見に行って最後に宮殿に行ってみましょうか。ミアさんありがとうございました」



「どういたしまして。シャルさんもぜひ満喫してくださいね」



「無論じゃ!」






「ここが最後の中央区にある宮殿です。この建造物にはこの街の議長が住んでいます。アーチ型の柱が特徴ですね」



「立派な建物じゃのう。これだけの建物に住むほどの人物だから、この街では相当な力を持ってそうじゃ」



「そうですね。議長は評議会の採決で選びます。今の人物は4期目ですね」



「1期は何年なのじゃ?」



「1期は5年ですね」



「なんと!では20年もこの街の議長をしておるのか!」



「今の議長はかなり長期になっていますね。黒い噂もたえない人物ですが、その手腕は確かです。さて、だいぶ日が暮れてきましたね。最後のフィナーレを見せましょう」



 フードの少女を手をさしのべ誘導する。



「ここです」



「おお!!」



 海に沈む夕日と、潮の満ち引きで濡れた街道がその光と反射して、荘厳な雰囲気をかもしだしていた。



「これは、素晴らしいのう」



「いい街でしょう?」



「ああ、いい街じゃ」



 静かに夕日を見つめるフードの少女をアレクは後ろから見つめていた。



「見つけた!」

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