宵の越しラジオ

若草八雲

溺れるイルカさん

ユウ:お聞きいただいたのはASIAN KUNG-FU GENERATIONで『Re:Re:』でした。2004年リリースの2ndアルバム「ソルファ」に収録されている一曲です。ミイちゃんそのころ何してた?


ミイ:2004年かあ。生まれてないんじゃないかな。


ユウ:そんなわけないでしょう。


ミイ:何度フェイントかけても、年齢の話はしませんよ。リスナーが知りたがっていても、秘密は秘密です。ユウちゃんこそ当時何をしていたんですか?


ユウ:さて、今夜も始まりました『宵の越しラジオ』。MCは宵の案内人、私ユウと、永遠の年齢不詳ミイが務めます。

 この番組は、TOHOFMをキー局に全国各地で放送されています。最近ではポットキャストでラジオが聴けるから、時代遅れになってきましたが、好きなんですよね、この口上。


ミイ:年齢の話を綺麗にスルーされたのが納得いきません。宵の越しラジオMCのミイです。この番組では、皆さんからのお便りとリクエストをお待ちしております。皆さんのハッピーなエピソード、日常の些細な悩み事、どんなテーマでも構いません。共有したい気持ち、相談したい出来事を筆に乗せて、飛び切りのリクエスト曲と共に送ってくださいね。

 リクエストは、番組公式ホームページのメールフォーム、もしくはブイッターの公式アカウントにリプライをつけて送ってください。


ミイ・ユウ: それでは今日も行ってみましょう! 宵の憂鬱なんて吹っ飛ばせ! 宵の先にこそ救いはある! ミイとユウの、宵の越しラジオ!


>再生:MONGOL800 / 小さな恋のうた


ユウ:本日の二曲目はMONGOL800で『小さな恋のうた』でした。リクエストをくれたのは宵の越しネーム「溺れるイルカ」さん。2001年の曲なんですね。今日は懐メロ縛りなのかな。


ミイ:リクエストに文句つけちゃだめですよ。まずはお便りを読まなくちゃ。


ユウ:そうでした! 溺れるイルカさんのお便りは…

「僕には好きな人がいます。今日リクエストしたのは、好きな人が良く聴いている曲です。いつも彼女が口ずさんでいるのですが最後まで聴いたことがなくて気になっていました。CDショップにも売っていないので、ひょっとしたらと思いリクエストしました」

 おお。恋の悩みかな。今ならCDショップいかなくてもスマートフォンでダウンロードできるでしょ。


ミイ:好きな人が聴いているからCDで欲しい、ロマンチックだと思いますよ。それに、ダウンロードで聴くのとCDで聴くのは結構違いますからね。


ユウ:収録される音域の差があるってやつ? でも、ダウンロードが流行ったらCDの売上は減ったんだから、実は誰もわからないんじゃない?


ミイ:ユウちゃんは妙なところで現実的ですよね。好きな人の聴いている曲をCDとして買う。ドキドキするシチュエーションだと思いませんか?


ユウ:わかんないなあ。まあいいや、イルカさんのお便りの続きを読みましょう。

「彼女の歌を毎日聞くたびにサビだけは覚えてしまいました。他の部分は歌ってくれないのでよくわかりませんが。彼女は夕方になると、海が良く見える窓際に腰かけてこの歌を口ずさんています。きっと、彼女にとって想い入れの深い曲なのだと思っていました。そこで、先日、僕は彼女にそのことを尋ねてみました」

 それ大丈夫なの。危険な質問じゃない? イルカさんの距離の詰め方が私にはわからないよ。

「彼女は、この場所にはこの曲が似合うんだと言いました。この場所でこの曲を聴いても、過去はやり直せないけれど、今日に留まっている必要はないという気持ちになるんだと話すのです。僕には、彼女の言葉の意味がしっくりきませんでしたが、それは曲を知らないからだと思うのです」

 んー……なんか恋愛じゃなくなってない?


ミイ:ちゃんと恋の話だと思いますよ。彼女、さんでいいのかな。彼女さんにとって、夕方の海がみえる場所と、この歌はセットで思い出の一部なのかもしれないですね。イルカさんと彼女さんの距離感はわからないけれど、思い出も含めてイルカさんが彼女を知りたいと思う気持ちはわかるような気がします。


ユウ:そういうものなのかな。

「けれども、CDショップに行っても古いCDだからおいていないと言われて、注文できるかどうかも難しいと言われています」

 CDってNamozenとかで売ってないの? あんまり古いと中古品しか買えない? ディレクターなんで知ってるの。あ、使ってるんだ。


ミイ:ユウちゃんは使ってないんですか?


ユウ:私にはリクエストに応えてくれる親友がいるので。

「宵の越しラジオなら、どんな古い曲でも音源があるかなと思って、願掛けの意味もこめて今回リクエストをしました。もしリクエスト曲がかかったら、今度、思い切って好きな人に告白しようと思っています」

 おっと、これは茶化している場合ではなかった。


ミイ:イルカさん、リクエストのあった「小さな恋のうた」、イルカさんの下にも届きましたか? 私たちもイルカさんの勇気と彼女さんへの気持ちが届くこと、祈っていますよ。


ユウ:そうそう。恋愛は当たって砕けろ、じゃなかった。砕けるまで当たれって言いますからね。伝えなければ始まらないので頑張って!


ミイ:ユウちゃんのアドバイスは不吉ですが、行動しないと始まらないのは本当ですよ。結果が出たら教えてくれると嬉しいです。私たちも恋が実ること祈っています。

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