収支および業務忌録:記録者 砥上藍奈

バイト内容:くねくね人形(仮称)のおき上げ



給金:実働日数×六十万

  :二十日間の勤務だったため、千二百万

  :折半せっぱん



参加者:架城かじょう日華にっか

   :砥上とがみ藍奈あいな



備考:あの村は、補陀落郷ふだらくごう――補陀落渡海を実現するための実験施設だったと考えられる。

  :補陀落渡海とはすなわち強制成仏。あの場に留まれば、私たちも肉体を失っていた可能性がある。

  :〝あの男〟は、この場所を使ってなんらかのくわだてをしていたらしい。

  :補陀落郷ならば、怪異を形而上けいじじょうへと送還そうかんすることも可能だろう。

  :なぜ、このように破棄はきしたのか、不明である。


  :くねくねはおきなの操り人形であり、人造人間であるからこそ、不浄ふじょうを嫌った。

  :あの世のことわりに身を置くからこそ、けがれと炎は死に直結したのだ。


  :肉の成分を研究室に持ち帰り調べたが不明だった。

  :DNAの配列が既存きぞんのなにものとも一致しない。謎肉。


  :後日調べたところ、山火事があったという情報は無かった。

  :また、くだんの村は、あらゆる地図上に存在しなかった。



  :私たちはどこで働き、なにを食べていたのだろうか?

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