第3話 城の中では

殿、奥方様が増えましたな


おお、三太夫か

いや

鈴という娘だが

鈴には奥方にさせるつもりはない

何か無理のない仕事をさせるように頼むぞ


はい

そのようにいたします

どのような仕事をさせましょうか


そうだな

私の食事でも作ってもらうか


かしこまりました

そのようにいたしましょう


お殿様

夕食を作って参りました


どれどれ

食べさせてくれ

美味しいじゃないか

鈴が作ったのか


はい


今後は食べながら話し相手になってくれるか


私でよろしいのでしょうか


もちろんだ



お殿様

今日は新しい

若くて美しい子がいるではありませんか

どうされたのですか


大奥

突然どうした


いえ、噂を聞き様子を見に参ったところです

奥方にさせるおつもりですか


いや、あの娘は奥方にはさせない


なぜですか


それは言えぬ


わかりました



城内にて


そなた

お前は何という名前じゃ


鈴と言います


また、美しい子だね

私は大奥で定という

殿のために尽くしなさい

わかりましたね


お声を掛けて下さいまして、ありがとうございます


殿、また美しい娘を見つけましたな


定ほどではないぞ


褒めていただいて、ありがとうございます




大奥様

新しい娘が殿のそばに参りました

このまま、黙っているのでしょうか

私達、奥方のプライドが許しません


わかっている

私もいろいろ考えてな

大丈夫だ

心配しなくともよい




奥方の部屋を見せて上げましょう

あなたも奥方になるかもしれないからね

ここじゃ入れ


はい


この女め


キャアア、止めて下さい


どんな綺麗な体をしているのかね

まあ、色が白くて美しい

お殿様が気にいられるはずだ

言っておきますが

私の前で恥をさらすんじゃないのですよ

私は大奥ですからね


はい


どうしたのだ

顔色が悪いぞ


いえ、何もありません


今日はさぞかし疲れたであろう

先に早く寝なさい


お殿様も

ゆっくりと休まれてください




お殿様


なんだ定


最近は、どうして私を可愛がってもらえないのでしょうか


ああ、戦疲れでな

その気にならないのだよ


もしや

あの鈴という女に

夢中になっているのではありませんか


いや

そんなことはない


そうですか

わかりました

ゆっくりお休みください




みえこ


はい

大奥様


この間も言ったが

あの、鈴という女をなんとかせねばな


そうですね

お殿様は最近は、私達を可愛がってくださいません


何かいい方法はないか


三日後にお茶会が開かれます

おそらく

お殿様は鈴を隣に座らせるでしょう

お茶に毒を入れたらどうでしょうか


それは大変なことになるではないか


私達がしたとは思わせないのです

大奥様と私は

お殿様の近くに座ることとなります

私が可愛がっている

ゆきなという娘にお茶に毒を入れさせるのです


ゆきなという娘は私達のことを言うのではないか


いえ

ゆきなの父は病で私が薬をやっております

固く口止めをさせましょう


大丈夫か


少なくとも

大奥様の名前はだしません


そうか

それはいい考えだな




ゆきな

こっちに参れ


はい、みえこ様

どうされましたか


三日後にお茶会がある

お前がお茶を皆の者に渡す役目となっているな


はい

その通りでございます


鈴という女には

この毒を入れたお茶を渡しなさい


それは

できません


私は、お前の父には薬をやっているであろう

薬がなければ

お父様の命はないぞ


そんな


大丈夫じゃ

お前は知らなぬと

殿にはそう言い切るのじゃ

誰かが入れたと言えばいい

私が助けてやる


大丈夫でしょうか


ああ

くれぐれも、決して私の名前はださないようにな


わかりました

みえこ様


お前の父のためだぞ


はい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る