第7話 王都制圧戦
破竹の勢いで止まる事のない快進撃を続ける魔族の軍勢。ついに人類連合軍の中核を占めるエスクード国へと侵攻を開始する。
ここを抑えることができれば連合の統率も乱れるだろう。魔族による世界統一がいよいよ現実のものとなる。
今回の戦は魔族側が人類側の4倍近く多い軍勢で挑んできた。人類側に勝ち目などなかった。
人類側は表向きこそ打倒魔族を掲げその使命に燃えている者もいたが、3分の1は内心は勝ち目がない戦だと知って意気消沈していた。
戦が始まり、両陣営が衝突する。そんな中、ワタルは戦場で彼と会うのは2度目の再会をする。
「キヒヒヒヒ……会いたかったぜぇ、ワタル!」
明らかにくぼんだ眼で、不気味なまでにゆがんだ笑みを浮かべる宮本。勇者の姿というよりはもはや憎しみと復讐しか心にはない悲しい生き物であった。
「男に会いたかったと言われても嬉しくないね。ホモじゃあるまいし」
身体に装着できるほど小型軽量化されたステータス計測装置で宮本をスキャンする。LVは70を超え、その他パラメータもそれにふさわしい値になっていた。
「なるほど。そこまで強くなったか。なら俺も相応の力を出さなくてはいけないな」
ワタルが剣を地面に捨てると、カラン、という音ではなくズジン。という凄まじく重たいものが地面に衝突したような腹に響く音が出た。
「まぁお前の事だろうから復讐しに来るとは思ってた。それを指をくわえたまま待ってる程のんきではないんでね」
「重鉄」製の重たい武器や防具を捨て身軽になったワタルは宮本に向かって劣等生物を見ているかのような目線を向ける。そこに敗北の色は無かった。
「シャドウサーバント」
ワタルが術を唱えると彼の影がムクリと起き上がり、彼の動きに合わせて追いかけるように動き出す。
「体術 最大奥義 『
ワタル本体の1000の拳と、その影が繰り出す1000の拳、合計2000発の拳が
彼の防具である胸当てを殴り砕かれ、持っていた剣も殴り折られる。
「!? バ、バカな! 聖剣エクスカリバーが!」
「お前のステータス、見させてもらったよ。俺が思うにお前は俺を殺すために血のにじむような努力をしたんだと思うよ。うん、わかるわかる。
でも残念だね。その努力も、積み上げてきた経験値も、全部無駄になっちゃったね」
宮本の努力、彼のワタルに対する憎しみ、拷問と言える程の特訓に耐える苦しみ、積み上げて来た経験値……ワタルはそれらを『
大の字になって地面に転がる宮本に向かって、拾いなおした
続けて右足、右腕、左腕と順に骨を折っていき、肉がくっついているだけで「ダルマ」と変わらない状態にしていく。
「ブチ殺すぞワタル! 絶対、絶対にブチ殺してやるからな!」
絶体絶命の状態にされてもなお強気の姿勢を崩さない宮本。そんな彼に向かってワタルは自分のズボンを脱ぎだした。そして……
ぢょぼぼぼぼぼ……
ワタルは宮本の顔面に尿をかけた。
「うわっぷっ! 止めろ! 今すぐ止めろワタル!」
「止められるわけないじゃん、こんな楽しい事。あのスクールカーストS層の宮本君が最底辺の俺のションベンをまともに浴びているなんて最高の絵じゃん。
バッテリー切れでスマホが使えないから撮影出来ないのが本当に、そう本当に……残念だよ」
「ぶっ殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! ぶっ殺す! 絶対にぶっ殺す!」
「殺すだぁ? お前が俺を殺すんじゃなくて、俺がお前を今この場で殺すんだろ? 相手が違うじゃねえか。
まぁいいや。これからお前の事を殺すけど「びっくりする程」罪悪感が無いな。あれだけ俺をいじめていたから当然の報いだろうけど」
そう言いながらワタルは宮本の頭を剣で文字通り、真っ二つにかち割った。当然生きているわけがない……即死だ。
「これで勇者は全滅か。あっけなかったな」
今回の戦でワタル以外の2年C組のクラスメート、教師、巻き込まれたバスの運転手。全員戦死した。もはや伝説は打ち砕かれ人類の夢も、希望も、砂上の城のように崩れ去ってしまった。
【次回予告】
伝説に語られた勇者一行の全滅。最後の希望を絶たれた人類は最後の手段に出た。
第8話 「人類最後の抵抗」
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