第4話 ようやく掃除スキルに気づいたギルド職員たち
「た、大変だ!」
ギルド『ドラゴンズテイル』の組員がギルド長の部屋のドアを乱暴に叩いて開ける。
「うるさいぞ! 今度はどんなもめ事だ!?」
ストレスがマッハなのか常にイライラして怒り心頭な彼は怒鳴りながら応対する。彼はここ数日ストレスのあまり寝つきが大変悪く、まともに眠れない日々を過ごしていた。
毎日胃がキリキリと痛くなる日々を過ごしているに加え、睡眠不足で頭が回らないという追い打ちがかかっており、肉体的にも精神的にも体調は絶不調だった。
「もめ事じゃあないんですが……1ヶ月ほど前、王都に完成した最新のステータス解析装置にサンプルを提供したことは覚えていますよね?」
「王都のステータス解析装置……? ああ、アレか」
1ヶ月ほど前に王都に完成したステータス解析装置……それは現時点では世界で最も詳細なステータス解析能力を持つ魔導機械で、
その解析能力の高さに加え調査する人間の魔力を専用の媒介に流し込めば、本人が居なくてもステータスが計測できるという画期的な装置だ。
「で? その装置がどうかしたのか?」
「解析結果が今日届いたんですが……」
「今日になってか? ずいぶんと時間のかかる解析だな。確か解析速度も世界1という触れ込みじゃなかったのか?」
「1人だけ、異様なステータスを持った人物がいたんです。王都にいる解析装置のエンジニアが言うには優に100回を超えるほど再計測したんですが
全ての解析結果においてそのステータスがついていて、信じられない話ですが本当に持っているとしか思えない、と言うんです。その解析で時間がかかって、こんなにも結果が届くのが遅れたそうです」
「見せてもらおうか?」
職員はその問題の人物に関するデータが書き込まれた羊皮紙をギルド長に見せた。
「! こいつは!!」
ギルド長はすぐにピンと来た。あの掃除ばかりやっていて成長性がない、と決めつけ解雇したあいつだ。
「で、スキルは……!? そ、掃除スキルLV999だと!?」
スキルのLVは普通の人間では200に届くものは少ない、才ある者が一心不乱に努力しても400に届くのは稀という中で、LVが999という異常な数値。
これなら何度も再計測するのもうなづける。
「……スキルの詳細は分かるか? スキルLVを上げて身に着くアビリティはどうなってる?」
「言うと思って用意しておきました。こちらです」
職員は別の羊皮紙を出す。そこには掃除スキルのLVによって身に着く能力の一覧が書かれてあった。彼が特に注目したのは……。
・LV650:ストレス清掃
・LV740:ストレス清掃 中
・LV825:ストレス清掃 大
・LV999:ストレス清掃 極
この4つだ。説明には「清掃中周りの人間のストレスを洗い流す」と書いてあった。まさか、これか?
「……まさか、あいつがいたからストレスなく仕事をしていたように見えたのか?」
「そんなバカな話、あるわけが……」
「いや、ありうるぞ。仕事をストレスに感じるようになったのはアイツを追い出してからだ。このスキルを考えると全ての「つじつま」が合う! 君、彼が今どこで何をしているのか調べてくれないか!? 大至急だ!」
「は、はい!」
ギルド長は即座に指示を飛ばした。
数日後……
「天界の掃除人、か」
胃薬をがぶ飲みしながらギルド長は報告結果を見ていた。それによるとギルド長が追放した彼は神にその実力を評価され今では「天界の掃除人」として働いているそうだ。
今では聖地である聖都に居を移し、そこにある選ばれた者しか持てない天界に通じる扉を開けられるカギを持って、そこから天界へ仕事に出かける生活を送っているらしい。
「……何としても連れ帰らねば。ギルドの繁栄のためにも」
彼は聖都へと旅立つ準備を進めていた。目的はただ1つ、彼を再びギルドメンバーとして迎え入れることだ。このままではギルド全体がストレスで潰れてしまう……そうなったら終わりだからだ。
【次回予告】
これまで行ってきた交渉の中で最も難度の高いものになるだろう……だが諦めるわけにはいかない。ギルド長はそう覚悟して聖都へと向かう。
何としても彼を説得して戻ってきてくれなくてはならない。そうしないとギルドが存続の危機にさらされるからだ。
第5話 「交渉」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます