第3話 私は私であなたはあなた

 病院食は案の定、あまりおいしくなかった。精進料理かよっ僕は思った。精進料理よりかは、量はあるから別にいいんだが。まぁ、精進料理を食べたことないんだけど。

「ごちそうさまでした」と、僕は言った。誰もいないが、そういうのはきちんとしときたい対応なのである。動物の命をもらったんだ。その感謝はしっかりしないと。

 五分ぐらいたった時、看護師らしき人が、食器を片付けに来た。今の僕には、だれが、人間なのかは、わからないからである。

 特にすることもないので、僕はスマホをいじっていた。SNSやゲーム、検索エンジンを使い何かを調べる。怠惰な生活をする以外なかった。一応、この病院内には、スポーツができる場所があるらしいが、生憎と、それをする気にもならなかった。今は、何もやる気が起きず、ぼーっと過ごしているだけだった。

 ちなみに、今でも、不気味な奴は見ることはある。だが、今は、それすらどうでもよく、暇つぶし程度に、観察もするようになっていた。 

 あいつについて少しだけわかったことがある。それは、僕みたいなやつには、見えるということだ。僕は、臆病で、人の目を気にする、そんな奴に見えるらしい。多分今は、安心空間にいるから、ここに、あいつは来ないのだろう。しかし、病院という空間は、僕にとって安心空間としても、ほかの人には、安心空間ではないかもしれない。病院が怖い、家に帰りたい、という気持ちを持つ人だっているだろう。それに僕みたいな性格のやつがいたら、近くにあいつが現れるだろう。だったら、虚栄心でもいいから、形だけでも、強くなるべきだろう。しかし、そんな簡単に人は変われない。そうそういう人だって、世の中に入る。

 君にならできる、やればできる、努力は裏切らない等と、人を鼓舞する言葉はたくさんある。しかし、それはあくまで根性論だ。自分は自分ということを決して忘れない。人は人だ。自分が変わったから、ほかの人もできる。意味が分からない。私は私でお前はお前だ。他人に自分の人生を授けるほど人は甘くない。もしいたとしたら、それは身に危険が迫っている時だ。それを助けるかどうかも自分自身。十人十色とはよくいうものだ。だから、私がその不気味な奴という存在を消すのは分かったが、消すとは限らない。私は私なのだから。

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