第60話 尊敬している彼と

 私は、エルード様に呼び出されていた。なんでも、大切な話があるらしいのだ。

 ゲルビド子爵家との話し合いが終わったため、それ関係の話ではないだろう。

 それ関係ではないなら、私には見当もつかない。一体、どのような話なのだろうか。


「アルシア、俺は回りくどいことは嫌いだ。故に、率直に言わせてもらう」

「あ、はい……」

「俺は、お前のことを愛している。俺の婚約者になってもらえないか?」

「え?」


 エルード様の言葉に、私は真っ白になっていた。

 俺は、お前のことを愛している。急に言われたその言葉は、間違いなく告白の言葉だ。つまり、エルード様は私のことが好きだということである。


「ええっ!?」

「驚いているのか? まあ、無理もないか……」

「え、えっと……」


 私は、とても混乱していた。

 それを落ち着かせるために、とりあえず一度深呼吸する。

 エルード様が私のことが好きだったことは、驚くべきことだ。私は鈍感なので、そんなことはまったく気づいていなかった。

 しかし、驚いてばかりはいられない。この告白に対して、きちんと向き合う必要があるだろう。


 エルード様からの告白。少し落ち着いて考えると、それはとても嬉しいことだった。

 私は、彼のことを尊敬している。頼りになるし、かっこいいし、優しいし、彼のような貴族になりたいと思っている。

 そんな彼からの告白は、とても嬉しい。彼が私のことを好きだという事実は、私にとって喜べることなのだ。


「う、嬉しいです……その、エルード様が私のことを好きでいてくれるなんて」

「そうか……」

「でも、本当に私でいいんですか? 家の事情とか、そういうこともあるでしょうし……」

「それについては、既に話をつけている。父上も母上も、俺とお前が婚約することはいいことだと言ってくれた」

「そ、そうなのですね……」


 私の答えは決まっていた。

 ただ、貴族として本当にそれでいいのかは確認するべきだと思った。

 だが、それが問題ないなら、もう何も考える必要はない。彼の思いを、受け入れればいいだけである。


「わかりました……エルード様、私をあなたの婚約者にしてください」

「ああ、もちろんだ」


 私は、エルード様の告白を受け入れた。

 尊敬している彼と、ともに生きたい。そう思ったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る