第48話 鳥肌が立つこと
私は、屋敷の前でシャルリナと話していた。
彼女も、他のラーファン家の人々も、エルード様の血筋は気にしていないらしい。
だが、それは本人には決して伝わらないことである。直接言っても、ずっと疑念は残ってしまうだろう。
「正直、私は血が繋がっていないとか言われても、あまりピンとこないんですよね……物心ついた頃から一緒にいましたから、よくわからないんでしょうか?」
「まあ、小さな頃から一緒ならそうかもしれないね……」
「だから、お兄様はお兄様ですね。それ以上でもそれ以下でもありません」
シャルリナにとって、エルード様は小さい頃からいる兄である。
だから、血の繋がっていないとか、養子だとか、そういう事情はよくわからないのだろう。
彼女は、基本的にエルード様に遠慮がない。気を遣ったりしないのは、そういう事情があるからなのだろうか。
いや、別に血が繋がっていなかったからといって、気を遣う訳ではないのかもしれない。現に、私は血が繋がっていても気を遣っているので、人によるのだろう。
「そういえば、創作物なんかで、義理の兄に恋をするなんて、よくあるじゃないですか。ああいうのを見ていると、私は鳥肌が立ちますね」
「え? そうなの?」
「だって、私でいえば、あのお兄様と結ばれることになるんでしょう? そんなの絶対に嫌です。あの人の妻になると絶対に苦労しますよ? 間違いありません」
シャルリナは、笑いながらそう言ってきた。
しかし、エルード様はそこまで貶められるような人ではないだろう。
優しいし、かっこいいし、頼りになる。妻になっても、苦労などしないのではないだろうか。
「私は、そんなことないと思うよ。エルード様なら、きっと奥さんを幸せにできると思う」
「え? マジですか?」
「うん、いい人だし、きっとそうだよ」
「うげっ……」
私の言葉に、シャルリナは顔を歪ませた。
彼女の中のエルード様の異性としての評価は、とても低いようである。
「まあ、人によって評価は変わりますよね。でも、個人的にはあの人を選ぶような人は趣味が悪いと思います。まあ、もっとも、政略結婚になるはずなので、選ばれるようなことはないのかもしれませんが」
「あ、うん……」
「うん? お姉様? どうかしましたか?」
シャルリナの言葉に、私はとても焦っていた。
なぜなら、走っているエルード様が目に入ってきたからだ。
「げっ……」
「……」
「あ、その……」
「ふん……」
エルード様は、何も言わずに走って行った。
三周目に入ったのだろう。何も言わなかったのは、悲しかったからなのかもしれない。
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