獣の森の呪いたち

たくひあい

第1話 耳の少年

地にたえし 夢ゆめならん

いかずちをもって

尊きを翻し 盲目を訪わせ

果肉の戀 爪鱗 浴妖の水 花の酒樽





 シュタタタ、タン、と軽やかなリズムが地面を蹴って、何者かが舞い上がる。高木の枝の上に着地して、彼は、息をついた。


「ふー、これで、プラムをひとりじ……」


め、と言おうとした瞬間だ。ポケットに入れて隠し持っていた果物が無いことに気付く。

落としたか。いや、まさか。焦った彼に、下から声がかかる。


「……ひとりじめはだーめ」


 そう彼に声をかけたのは小さな、魔法使いの少女だった。彼女の手に持つ杖が、プラムを彼女のいる木の下の方に引き寄せ、浮かせている。



背までの長い髪を、密あみにして、垂らしており、その色はミントのような淡い緑。ぱっちりした目は、目付きが悪いのか、寝不足なのか、中途半端に閉じぎみだ。


「お前、喰われたいのか!」


牙をギラつかせ、彼──右半分が青い髪、左半分が黒い髪の少年が、木の根元に降りようとする。頭には柔らかそうな獣の耳があり、それを気にしているようで、隠すように伸ばした髪は、少女までとはいかなくも、まあまあの長さがあった。いつもはひとつに結んでいる。


「レディになんてこと聞くのよばか!」


「なにがレディじゃ、ぼけ!」



 口汚い喧嘩が始まっている間に、プラムを二人からそっと奪い、うふふ、と微笑んだのは、果実のようにみずみずしい橙色の髪の少女。ふわふわとカールした髪には、緑色のヘアバンドを付けており、本当に果実みたいだ。

ちなみに、このヘアバンドは、ときどきターバンや、他の緑色になる。彼女には、緑色を頭に乗せたいという、妙な癖があるのだ。


「ランも、レンズもよくやるわ……これ、私がもらおうかな」


ランと言われた少年が、口をあんぐり開けたまま固まり、レンズと呼ばれた少女がその水晶のような瞳を潤ませ、橙髪の少女に泣きつく。


「うわーん、ヌーナちゃん! レーさまはちゃんと心を入れ替えるよ?」



「レンズさん、その鬱陶しい一人称、なんとかならない?」


「え、レーさまは、レーさま……つまりレディなのだし……」


「はいはい」


会話を諦めたヌーナは、彼女たちに、半分ずつ、爪をめり込ませたプラムを放り投げた。あんなに求めた果実だったはずなのに、二人は、ひっ、と悲鳴を上げて避ける。


 果実は、緑色の危ない液体を滴らせ、どろどろと液体化して地面に染みていく。彼女は、爪で触れたものを毒にしてしまう体質なのだった。

──こんな三人は、実は共に旅をしている。

目的地は、同じ『大陸』だ。

森の木のすぐそば、小さな神殿の跡で、三人は暮らしている。

ステンドグラスや祭壇のある場所から、さらに梯子で降りた地下に、テーブルや棚を持ち込んでいるのだ。


「──にしても、貴重なプラムが勿体ないよー!」



 窓の外、地面に落ちたプラムを見ながら、椅子に座るレンズが潤ませた瞳で、訴えた。安売りしている朝の市場で買った果物は、朝の糖分補給に欠かせない。

今日は買い物の際、いつもより1個多目におまけしてもらったのだが、それを誰が食べるかで、ランとレンズが朝から揉めていた。

……ちなみに買い出しに行ったのはヌーナである。


「あら、ごめんレンズ。私も、ちょっと味見してみたかったの。毒になってしまったけど……」


 触れたものを毒にしてしまう彼女の体質は、ある呪いによるものだ。ヌーナはそれに気付かずに水を汲んで、国中の花や木を枯らした過去がある。そして、その実を運悪く食べてしまった人も。


 禁断の森であった場所に、わざわざ出向いたのも、悔いて、自らを殺するためだったが……そこに住んでいたのは、少年が一匹。


『お前、おれの知ってるやつに似てるな、だから食わない』


なんて、木の上から物騒な台詞を投げるとともに、彼女のそばに降りたのだった。行き場のないヌーナは、『森の番』をしているという、彼と話すようになり、そんなある日にまた森に足を踏み入れたのが、彼女、レンズだ。



「そうなんだぁ。ごめんね、気付かなくて! ヌーナちゃん、今日はちゃんとお水飲んだ? 体が全部、蝕む毒に変わったら……」


「大丈夫。ちゃんと飲んでるわ。月とお日様に交互に当てた、清らかな水よ。私には、不味いけどね……」

「騙されんなよ、ヌーナは明らかに、毒をこっちに投げ」


つい、ランが呟いた言葉をヌーナがにこやかに笑って制止する。光輝く爪が、一瞬、明らかに彼の眼球を向いていたと思う。

……恐ろしい。

ぞわわ、と鳥肌を立てるランを無視し、ヌーナも、ふと、レンズとともに窓の外の果実を見つめる。


 毒を帯びた果実を食べにきたらしい。何らかの黒いドラゴンっぽい生き物が、喜びに満ちた目で、果物を貪り始めているのが見えた。厳つい顔をした、ひと目見ただけで背筋が凍りそうな神竜で、ときどきこの地域を飛んでいる。


「……りゅうたん、今日も毒々しい食べ物にありつけて良かったね……」


「あの毒は《ああいう》生き物には効かないのよ。きっと」


「レー様は、心が清らかだからダメージをくらうのね……」


ヌーナは、答えない。

先ほどの口汚い二人の喧嘩を思い返してから、曖昧に笑っただけだ。


 ランは、そんなやりとりの中で気を取り直すと、今日も、窓辺に置いた、小さな鉢植えに話しかけ、壁にかけていたじょうろで、水をわずかに与える。


「親友」なのだという。

彼は、ずっと『親友』が、顔を出すのを待っているらしい。


ヌーナは当初、それを聞いたとき、「なんだこいつ……」と容赦なく思っていたものだが、あまりに真剣な彼を見ているうちに、本当に『親友』なのだろうと、思えるようになった。


「親友は、『種』になってしまった。だからおれは、守って、待っているんだよ。ずっと──あいつが育つのを」


それが、彼の言ったことだ。その正しい意味は、彼にしかわからない。だが、彼は自分のことをあまり話したがらないので、誰も聞けずにいる。


話しかけながら、嬉しそうに鉢を抱えているランは、ヌーナが複雑そうにそれを見つめていたのに気付くと、嫌そうに睨み付けた。


「毒になんかさせない」


「しないわよ。触らないし」


 それを聞いたヌーナも不愉快に顔を歪める。なんでもそうやって毒にすると思われるのは、寂しい。


 地元の一家にそう思われて、地元を出てきたからこそ、ランにそんな風に言って欲しくなかった。


「……こいつ、芽が出てもう少し大きくなったら、森に植えてやるつもりなんだ。その前に、ヌーナの呪いが無くなればいいけど」


ランは彼女の顔色に気付かない。ヌーナは、ただ寂しそうに、ランから目を逸らす。

それに気づいたレンズは、がーっと歯を見せて威嚇するように、ランに言う。


「そんな言い方しなくてもいいじゃん。レー様は知っているよ。ヌーナちゃんだって! 好きでこんな……」

「どうして女子はいちいち自分は関係ないのに群れて庇いたがるんだ?」


「あーもう! そういうことじゃないってば!」


「あのな……これはヌーナの問題だし、おれの問題だ。怒ったり邪魔だと言ったんじゃない。ただおれは、とても大事なんだ、この鉢植えが。だから、その。信用しないわけじゃないが、心配になってしまうんだよ」

ランは、突如間に入ってきたレンズに不思議そうな目を向け、それからヌーナにすまない、と謝った。


「別に、事実を言われたのだもの、謝らなくていいわよ」


ヌーナは少し眠そうにそう言うと、冷やすための氷の入った木の箱を開ける。電力を使わないタイプの、古い冷蔵庫だ。


「へえー、ヌーナちゃん、おっとなー」


レンズは感心した声を上げながら、ミント色の髪をふわふわ揺らす。

ヌーナは冷蔵庫から水のびんを取りだしながら、レンズを見つめた。


「……明らかに事実と違うとか、明らかに向こうの一方的な誤解や、勝手な言いがかりとなれば、私だって怒るわよ。正しいことや、欠点は──つらいけど、ある程度仕方がないわ。直せない私にも落ち度があるもの」


「えー、レー様はそんなのできないよ! 全部怒って、バリバリドカーン!! 問答無用だよ。腹立つもん」


「あなたは良いわね。私も、あなたみたいな強さが欲しかったな」


「レー様も、ヌーナちゃんみたいな冷静な強さが欲しかったよ」

「外に出てくる……」


二人が話を始めると、それに興味の無いランは、鉢植えを定位置に置いて、それから地上への階段に繋がる木のドアを開けた。


それを見て、すぐにレンズが、あっ、私もと、気付いたようにヌーナの元を離れ、彼の後ろに続いていく。


「りゅうたんの鱗は、加工品になるから、高く売れるんだよね。落ちてないかなっ!」


ランは、付いてくんな、と不愉快そうにレンズを無言で威嚇する。レンズは慣れたもので、ランの結んでいるやや長めの髪を、かざした手から出る魔力で上下にふわふわ揺らして『しっぽ、しっぽ!』と、遊んでいる。



ヌーナは二人をちらっと見てから、黙って扉から見て正面の奥にある、本棚の方に向かって歩いていく。


 やがて赤い色の、ややカビが生えた、古い本を取りだした。背表紙には『大陸と呪いの魔女』と描いてある。表紙には、どこかにそびえているらしい、大陸の絵。


それは、レンズの出身地の大陸で、『毒の呪い』を、ヌーナにかけた魔女のいる大陸。

──そして、人食い植物の育っている大陸だった。



地上に出たランは、森の神殿より少し先にある、聖なる泉へと向かった。


 すると、今日はりゅうたん、とレンズが呼んだ竜が、水を覗き込んだまま、じっとしている。こんなところにいるなんて、珍しい光景だった。いつもなら、さっさと巣に戻る筈なのに。


「お前、どうし──」


ランは事情を聞こうと、苔を踏みながら、竜の視線の先を追って歩いた。そして言葉を止める。魚が、泳いでいた。ぱしゃん、ぱしゃん、と音を立てて。この泉で泳ぐ魚は、今まで見たことがない。


 遠くの海からここに繋がっている川を、伝ってきたのだろうか。呆気にとられていると、魚はふっと、人の姿に変わった。


 白い肌。淡い水色がかったプラチナの髪は、背中くらいまでにゆるく波打っている。性別はわからない、気の強そうな男にも見えるし、優しげな女にも見える。虹色の瞳を持ち、美しい姿だ。


「──キミは、猫か」


ぱしゃん、と音を立てて水から上がってくると、その者は、ランに聞いた。ランは、どうしていいかわからないながらに、首を振る。

「だったら、狼か。なんでもいいけど、この僕を食べないでくれよ。あまりに美しい僕は──聞いて驚け、海から来た」


まためんどくさいのが来たな、とランは思った。だが言わず、代わりにひとつ頷いて言った。


「へえ、なんだってそんな遠くから?」


「故郷の海に、最近、毒が流れてくるんだ。その水は、この森からのものだと、燕たちからの噂で聞いた」

「毒っていうと?」


「今のところ、ぼくたちは大丈夫なんだが、森に近いあたりの水域の、海草なんかが、あまり育たなくなっていて、このままじゃ、美しい姿を保つためのサラダが食べられない」


「あんたが美しいのはわかったから、黙れ」


「わかってくれるのか! きみはなんと素晴らしい!」


その者は、濡れているし、ほとんど裸だった。美しく長い髪でもさすがに隠せない部分も多い。


その姿で、ランの腕をしっかり捕まえると、唇を、ランの口の中を吸うように合わせた。

ランは驚きで思わず爪が伸び、身体中の毛が逆立つ。

「……ひっ、な、にするっ!」


「おや。古しくゆかしい挨拶だが……? 驚いたか。 空気がなければ我々は死んでしまう。空気は大切なものだ。だから、自分の空気を送り込むということで、あなたに敬意を表しますという──」


「さっぱり意味がわかんねぇよ……」


「ふむ。その反応は、人間という生き物にそっくりだな。エサを口移しする親猿や、親鳥なら、このことでそのように照れないだろう──きみは、人間の社会に居たことがあるね?」


「そうだ」


「そうか。人間は好きか?」

「──もう忘れたよ。そんなこと。ずいぶん昔だ」


ランが、そう言いながらふと、視線を感じて振り向くと、いつの間にかりゅうたんを追ってここに来ていたらしいレンズが、固まっていた。


「あ……わ……わ……ランが、ランが! 裸の魚人族と、抱き合ってた!」


「……違う。一方的だ」


「大変だっ!」


「違う……」


ランが必死に弁解するが、パニックな彼女には聞いてもらえない。りゅうたんは、それを見届けたかのように、バサバサと飛んでどこかに行く。魚人族と呼ばれた者だけが、きょとんとしていた。


「なあ、猫。この人は誰だい?」


輝く白の髪をふわりと揺らし、ランに問う。


「おれは、ランだ。猫じゃない」


「いいや、きみらの名前なんかに興味はない。ただ、見たところ、魔力がおありだから、敵なら敵と、すぐに聞きたいんだ。急げば逃げられるからね」


「……本人に聞け」


ランは、レンズをその者のところに引っ張って行き、目の前で会わせる。

レンズは興奮ではしゃいだ。


「……魚人族の人って、レー様、始めて見た! そういや師匠が言ってたもんな。魚人族は、綺麗な髪をしてて、鱗や瞳が高値で──」

「ひいっ!」


魚人族、と呼ばれた者が怯える。


「冗談冗談。私、レンズ。世界を見通すための呪文を作っているの。魔術師見習い、研究中だよ。だからお金が必要で──」


「やはり僕の敵か」


「いや、魚人族は、師匠がお世話になったって聞いてるから、我慢するよ。あなたの名前は?」

「パールだ」


「おお、パール!! それっぽい!」


「……魔術師見習い。少しおしとやかに喋れ」


うるさいのが苦手なのか、耳を押さえながらパールが言う。ランは、慣れていたので今さらなにも思わなかったが、パールにはあまり好ましくなかったらしい。

「……ラン、助けろ」


眉を寄せて、パールがランを見る。艶やかな髪が、ふわりと潮風を漂わせて揺れた。レンズは、よくわからないがパールを気に入ったらしく、体のあちこちをつついている。


「ねーねー、性別とかある? あるならどんなの!?」


「……僕は、クマノミと同じだ。変わるときには変わる」


「ふーん。今は?」


「……特には固定されていないが、そうだな──」


「クマノミってなに!?」

「──魚、だ……」


なんだか頭を抱えるパールを見ながら、ランは思わず笑って、言った。


「──たしか海にいる魚だな。おれも見たことはないが、本で読んだ。レンズはずっと部屋にこもって、薬を調合していたから、あまり興味がないのか」


「へぇ、海の魚なんだ」


レンズは、曖昧に頷くと、再びパールに近づく。

パールがほぼ裸なことを、再び思い出して、彼女はうーんと唸った。


「服着ない?」


「なぜだ」


「だって、陸に出るんでしょ。毒の調査に来たんなら、歩いてみたら? なにか、見つかるかも」


「なぜ、陸に出るために服を着るのだ?」


「裸じゃ、風邪をひくよ!」

「服を着るのはいやだ。この僕の、泳ぐための肌が、皮膚にしまわれた鱗が、傷付いたらどうする」


「あ、そっか。傷付いたら、売れないよね……」


レンズも思い直して、パールに服を着せるべくつかみかかろうとした手を戻す。それから、裸のパールを連れて、泉から離れようとする。この辺りはめったに人がいないと言っても、さすがに、ヒトガタの生き物は特に、地上に出るには衣服がないと怪しまれるだろう。

ランは、少し考えてから提案した。


「レンズ──幻術でいいから、なにか、服っぽいのを出してやれ」


「あ、そっか。師匠に教わったんだ」


レンズは、納得して、パールに指先を向ける。

光に包まれたパールの体は、やがて白い衣服に包まれる。


「……ほう。これが、人間どもを惑わす光か。なるほど。知性のある生き物を騙すには充分なエネルギーだ」


 真面目に分析しようとしているパールを引き、改めて二人は元いた家へ向かった。

魚人族を見て、ヌーナは驚き、果実のように鮮やかな橙色の髪、のてっぺんにある緑のバンダナを、勢いよく揺らした。


「ぎ、魚人っ!?」


パールは、対抗するかのように輝く白髪を揺らし、そして跳び跳ねた。


「ああ驚いた、生き物を食べる珍しい人型植物──の家系の者に、似ているな。」

「あら。ご存知なの?」


ヌーナがおどけたように言う。彼は頷いて話した。


「昔、魔女の住む森で、見たぞ。若いときは、根付く場所を探して──人間のような形をしており、知性があるが、根付くと木になり、やがて森を作りあげるんだ。同じ血を持つ仲間が惹かれて、同じ場所に根付いていくらしい」


ランは、その話に思うところがあるのか、やや、耳を立てて聞いていた。気になる話が聞こえると、無意識に、頭に隠している獣の耳が立つのだ。

こちらの耳には聴覚は通っていないはずなのだが──しかし、いずれは、人間としての聴覚をなくしていき、代わりにこちらの耳が、声を、音を拾うようになるのでは、と予感している。


(母さん……)


ふと、母を思い出した。人間の母親が居た。彼は人間だった──はずなのに、実はそうではなかったことを知ったのは、10歳のときだ。


 それから、人間と隔離された感情と向き合わなければならなくなり、母にも、別れをろくに告げずに、森に居着いてしまった。


──彼は、もう元の生活に戻ることができない。人間の暮らしは、今の彼にはあまりに尊く、手にはいらない。




ランは母を思い出し、それから、ふと窓際に飾った植木鉢を見つめた。果たして、再び目覚めたときに《その生き物》は、『自分』を思い出してくれるのだろうか。


「ラン!」


 物思いに耽って(ふけって)いたら、名前を呼ばれ、ひょい、と視界に何かが跳んできた。反射的に左手で、掴むと、それは干し肉だった。

かじかじと音を立てて一心に噛み砕くランは、子犬のように無邪気に見え、思わず、ランに干し肉を放ったレンズも、癒されてしまう。

「美味しい? ヌーナから、今から朝ご飯だってさ。」


「……たまには、干し肉以外も食べたいものだ」


クチャクチャと噛み砕いた肉を味わいながら、ランはそう言い、完食すると、舌なめずりをした。結構気に入っているらしい。


「しょうがないわ、生肉はただでさえ高いのよ」


ヌーナが寂しそうに言いながら、手にしたフライパンを持って、窓際の隅に置かれた、小さなコンロに火をつける。


「魚肉なら、取ってきてやってもいい」


パールがそう言い、窓から僅かに見える川を見つめた。ランは首を振り、呟く。「……りゅうたん、食えねーのかな」


レンズが、がたっと、部屋の中央に置かれたテーブルにぶつかりながら立ち、ダメっ! と叫んだ。







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