救世主? おじいちゃん現る

小次郎こじろう、外で待っていてくれないか?」

「かしこまりました。わたくしは、外で待っていますので、何かあればお呼びください。」

 

 お店に入ってきたのは、白髪の品あるおじいさんだった。その後ろには、イケメンボディガードが、スーツを着て立っていた。

 

「いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ」


 おじいさん以外、お店の中にお客様はいなかったので、四人がけのテーブル席に案内した。


 私は、どこかで見たことあるおじいさんだと思った。


「コーヒーをくれないか?」


「はい、コーヒーですね。少々、お待ちください。」


「父さん、コーヒーひとつ。ねぇ…あの人…どっかで見たことない?」


「どれどれ…げっ!」


 注文を聞いた後、父と小さな声で話していた。


 …たぶん、父の知っている人ってことだよね。誰なんだろう…


 と考えながら、お客様のところにコーヒーを運んだ。


「おまたせしました。コーヒーです。ごゆっくりどうぞ」


 私は、コーヒーを置いて、カウンターに戻った。


「ここの店は、変わらないな…正之まさゆき


「!?」


「どこに行くの! お父さん! 逃げるなんて許さないから!」


 名前を呼ばれて、逃げようとするお父さんを引き留めた。


「叶奈ちゃん、大きくなったな!」


「どうして…私の名前を知ってるのですか?」


「正之…言ってなかったのか? 今日"ここに寄るから"と連絡しただろ!」


「い…いい忘れてた…叶奈、俺の親父で岡野 幸兵衛こうべい


「おじいちゃん…」


「すまんな…会いに来れなくて…」


「久しぶりに、会えてうれしいよ…おじいちゃん!」


「おぉ! そうか! 喜んでくれて、わしもうれしいぞ!」


「ちなみに…外にいるボディガードは、西園寺さいおんじ小次郎こじろうというんじゃ。 なかなかのイケメンだろ。外にいると女性が小次郎の方を見るくらい目立つ男だ。いわゆる"モテモテ"というやつじゃ。ハッハッハッ!」


 外を見てみると、お店の前を女性が通るたび、みんな足を止め小次郎さんの周りに、人だかりができるくらい大人気。


「で…今日は、何の用で来たんだよ。大事な話があるから来たんだろ!」


 父は、私とおじちゃんの会話に割り込んできた。


「忘れるところだった。正之…この店の”経営が危ない”って聞いたが、本当か?」


 おじいちゃんは、用件を思い出したかのように言った。


 そう! そうなんだよ。この店、倒産寸前だよ! おじいちゃん助けて!


「うっ…赤字なのは合っているけど、俺も辞時かなって…そんな時、"叶奈がこの店をやりたい"言うから任せようと考えてたところなんだよ」


「全く…お前は…赤字の店を娘に任せるなんて、無責任すぎる!」


「なっ! 親父も世界一周なんか行くから、俺が店を引き継ぐことになってだな…」


 この後も、父とおじいちゃんのケンカは続く。だけど、おじいちゃんは父の話なんて聞いていなかった。





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