プロローグ~悪魔の国編

 ここは、『悪魔の国』。日本より遥か下に存在する国である。


 そこには、性格の悪い悪魔達が住んでいる。


 昔は、天の国には、敵対していた。今は、敵対せず仲良しらしい。


 城には、ルシファーという一番偉い悪魔とその息子アゼルが住んでいる。


「まだ…あいつは起きていないのか? サタナキア、呼びに行ってくれないか?」


「かしこまりました。ルシファー様」


 命じられたお世話係の悪魔サタナキアが、部屋へ迎えに行くことになった。


 なんで私が、ルシファー様のバカ息子を迎えに行かないといけないだ?


 世話係だとしてもルシファー様が迎えに行ったほうが早いのでは? と思うが、ルシファー様に言ったら殺される!


 世話係のサタナキアは、部屋に向かう廊下で考えていた。


 部屋には、黒髪のイケメン悪魔が寝ていた。


「起きてください! アゼル様、起きてください。」


「ん? んんん…」


「めんどくせーな…ってあんた誰? なんで俺が、起きなくちゃいけない。まだ、寝てもいい時間だろ?」


「私は、お世話係のサタナキアです。アゼル様、ルシファー様が呼んでいます。」

「あぁ…わかった。今、行く。ありがとな! サタナキア」


 俺は、途中から最大限の笑顔で話した。


「…いいえ。仕事ですので…」


 バタン!


 俺は、扉を閉めて自分の部屋を出た。


 な…名前は憶えられてないけど、前は性格が悪かったはず…途中から言葉が丁寧になっている! しかも、笑顔で話すなんてありえない。一体どこで性格が良くなったんだ?


 ぶつぶつと、独り言を話すサタナキアがいた。


 親父の奴…世話係を使って、呼びに来たな! "世話係には、笑顔で優しく接しろ"とか言うから仕方なく…やったが…今度は、やらねぇからな!


 アゼルは、廊下で独り言をしゃべりながら、ルシファーのいる大広間に向かった。


 バタン!


「親父、どういうつもりだ? いい気分で寝ていたのに、起こしやがって!」

「朝から大きな声を出して、どうしたんだ? 愛する我が息子よ…」


 大広間には階段があり、その先の椅子に座って上から見下したようにルシファーは、息子を見ている。


「お前に大事な話があって、サタナキアに呼びに行ってもらった。」


「話ってなんだよ…」


「日本に、行ってもらいたい。」


「日本?」


「本当は…私が、行きたいところなのだが、この国を留守にするわけにはいかない。代わりに、我が"愛する息子"に行ってほしい。」


「なんで…俺が?」


「困っている人が、居るんだ…日本にある"恋カフェ"という店を手伝ってもらいたい。期限は、五ヶ月。」


「カフェだと! やったことないのに、できねぇよ!」


「それは…私が、教えただろ…え・が・おでやさし~く話せば女の子は、"キュンキュン"になるはず…そして、お店は人気店になる!」


「はぁ…バカバカしい」


「それにだな…日本には、女の子がたくさんいて楽しいぞ。前に、キャバクラという店に連れてってもらったことがあってな…女の子が、とても優しく接してくれた。あー日本に行きたーい!」


「おい…まさか"悪魔の姿"で店に行ったのか? それとも"人間"になって行ったのか?」


「息子よ! どっちだと思う? 俺が、"人間"になったと思うか?」


 ルシファーは、不穏な笑みを浮かべて言った。


「聞いた俺が…馬鹿だった。"悪魔の姿"で、行ったんだな。」


「正解! 私が、人間で日本に行ったら、人気が出でて町を歩けなくる。そ・れ・に~国に帰れなくなる。それは…困る…」


 俺は、可愛く話してくるルシファーに、怒りが込み上げてきた。


「悪魔の姿でお店は、歓迎してくれたのか?」


「歓迎してくれたさ! 女の子から『それは、コスプレですか?』って言われて、話がすごく盛り上がった。」


「それは…良かったな…」


「私の話を聞いて、日本に行きたくなっただろ!」


「行きたくない…」


「そうか! そうか! 日本に行きたいか! その願い! 聞いてやる!」


 テンション上がりすぎて、俺の話なんて聞いてないな。俺、日本に行きたいってまだ言ってないんだけど…勝手に、話が進められている…


 パチッ!


 ドドドドド!


 ルシファーが指を鳴らしたら、階段が出現した。


「なっ! こんな隠し階段があったのか…なぜ言わない!」


「伝えたところで、お前は『興味ない』とか言ってつまらないだろ…黙っていた方が面白い。」


「勝手に、面白がってんじゃねぇよ!」


「うふふふ」


「……」


「冗談はさておき、この階段を上がれば、"恋カフェ"の前に着く。ただ、日本の下の方に国がある為、外に出る時は"気をつけて"出るんだぞ! 女の子を怖がらせるなよ」


無理矢理に日本に行かせるつもりか… ここで断れば、ルシファーは、何か言ってくるはず。それは避けたい。日本に行くしかない…


「わかった…行ってやる。ただし!」


「ただし?」


「"監視"をつけるとか余計なことはするな!」


「ふっ…心配するな…そんなことはしない…私を信じろ!」


 …監視か…面白そうだな…バレない様につけてみるか。


「信用できないから…言ってるんだよ! 絶対! 余計な事するな!」


「はい! はーい! 余計なことしませーん。」


「じゃあ…行ってくる。なんか…返事が軽すぎるんだよな…」


 アゼルは、文句を言いながら階段を登って行った。


 数分後…


「サタナキア…アゼルはもう行ったか…」


「行きました。」


 ヒソヒソとサタナキアとルシファーは、話をしていた。


「サタナキア、アゼルに監視をつける」


「監視ですか? 怒られますよ?」


「バレない様に監視をつける。"あの子"を投入しよう!」


「"あの子"ですか?」


「レムレムを呼ぶんだ。」


「渋谷にいます。」


「電話すれば、すぐに来てくれるはず」


「わかりました。電話してみます。」


「頼む」


 アゼルよ…五ヶ月という短い期間、楽しんで来いよ…私も楽しませてもらう。そして、応援している…と言ったらきっと殴られる…な。土産話、楽しみに待っているぞ。


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