コンビニ店員とは、徒然草。
鈴木 クレオパトラ
第1話 徒然草
徒然草。作者吉田兼好の思索や雑感、逸話が順不同に、「つれづれなるままに」書かれている。兼好が歌人、古典学者、能書家などであったことを反映し、内容は多岐にわたる。
ー1ー
「ふーん、なるほどなぁ」
太郎はいつものようにレジの下に隠したスマホの画面を見ながら感心する。
「おーい、レジお願いします」
ふと顔を上げると、目の前には少しイラついた客の顔があった。
「あ、すいませーんお預かりします」
と間延びした返事をしながら太郎は少し慌てた様子で仕事を始める。毎度おなじみの常套手段だ。
手早くレジを済ませた後、帰る客の後ろ姿と19時を回ったばかりの腕時計を交互に見て太郎は大きなため息をつく。
太郎は2日前のバイト終わりの店長との会話を思い出していた。
簡潔な会話だった。
「あー太郎君、次のシフトからワンオペお願いできる?」
「まかせてください!」
なんであんなこと言っちゃったかなぁ。。
前回のバイトの終わり、太郎は初めて一人で仕事、いわゆるワンオペを任された。その時太郎は少し誇らしかった。つまりワンオペとは店を1人に任せるというわけだから、太郎が店員としてが1人前になったと認められた瞬間でもあったからだ。
しかし今、太郎はワンオペを任されたことを恨めしく思っていた。
24時間営業のコンビニでの客の多さをシフトの時間帯順にするとこうだ。
まず通勤ラッシュのある朝勤の8時~13時、次に帰宅ラッシュのある夕勤の17時~22時、昼勤の13時~17時、そして夜勤の22時~8時。
そして太郎が入っているシフトは客の多さランキング第2位の17時~22時!
幸い太郎の働くコンビニは近くに駅がないことからそこまで客は多くはない。何せ太郎のような新人がワンオペを任されるくらいだ。
しかし忙しくも全く暇でもない時間、夕勤はこのような時間との戦いだ。
太郎は今、忙しくも全く暇でもない時間と戦っていた。
というか暇だった。猛烈に暇を持て余していた。
そう、スマホも、テレビも、ゲームもない遥か昔の人間のように、暇故に考え、暇故に学んだ古代人のように。
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