チナチナマジック~帰り道には気を付けて~
野林緑里
第1話
千佳はいつのまにか独りぼっちになってしまっていた。
ほんの少し前まではもう一人だれかがいたのにもうここにはだれもいない。
一人で公園の地面に絵を描きながら、一人でブツブツとつぶやいていた。
「ちちんぷいぷい。ちちんぷい」
それはなにかのアニメでみた魔法少女の唱える呪文だ。そのことは覚えているが、どこで見たのかははっきりしない。
木の棒で地面に描くのは、一つの円。その中に五芒星というシンプルなものを描いていた。
「ちちんぷいぷい。ちちんぷい。どうか、千佳の願いを叶えておくれ」
そうつぶやきながら、書いては消して、書いては消してを繰り返していた。
「叶えておくれ。かなえて……」
千佳の声がだんだんと小さくなっていく。やがて、その声が消えていった。
☆☆☆
菜乃のクラスメートにはサボり魔がいる。朝、学校へ来ていたかと思うと昼過ぎには教室からいなくなっているのだ。
その度に先生が「またか」と不機嫌そうな顔をするのを何度も見ている。
そして、そのクラスメイトが先生から何度も怒られている姿も目の当たりにするのだが、彼の言い訳というものは「急用です。仕方なかとです」というものだった。もちろん、先生が納得いくわけもなく、彼の親に電話したのも数知れず。
先生はなんていう問題児を抱えてしまったのだろうと困惑していた。
「テツ。今日もサボる予定?」
ときおり、テツと呼ばれた問題児に友人たちがそんなことを聞いている姿を眼にする。
「知らん。呼びだされたから抜ける」
呼びだし?
なんの呼び出しなのかさっぱりわからなかった。
どうやら、誰かに呼び出されて抜けているらしい。でも、どうやって呼び出すのだろうか。
学校に携帯をもってくることは禁止されている。それに彼が携帯をもっている様子もない。
だれもが首をかしげた。
そんなある日のこと。
奈乃はテツがなぜ学校をサボるのかを知ることになる。
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