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「……で?」

 三日後、例のギルドの前。大勢の冒険者パーティの中で、ウルカはティオの飽きあきしたような声を聞いた。

「また、冒険者ごっこの依頼なの?」

 彼は魔導士に扮した格好をしており、右手には立派な杖を持っている。クローゼットからこの一式を引き出したのは、つい最近だったような気がするが。

「文句を言うな。依頼は選べない」

 偽の受付を済ませたウルカは、エントリーシートをひらひらさせながら彼の不満を聞き流した。明るい色のフードに、黒い胸当て。背中には大きな弓矢を背負っている。

「僕たち、パーティでもないのにさ。笑っちゃうよね、こんなの」

 そう言いながら、小さく肩をすくめるティオ。冒険者絡みの依頼になると、彼はいつもこうなのだ。嘲るような、馬鹿にするような言い方をする。

「笑えるかどうかはさておき、今回は俺の指示通りに動いてもらう。作戦は後で伝える。いいな」

「はいはい」

 ウルカの言葉に渋々頷いた彼は、横に並んでいるヴァニラの顔を見た。格闘家スタイルの彼女は、その茶色の瞳をじっとウルカに向けている。

 彼女は何も喋らない。と言うよりは、何も喋れないのだ。うなったり吠えたりはするが、出会ったときから今の今まで、彼女が言葉を口にしたことはない。おそらく今後も、口にすることはないだろう。

「ヴァニラ」

 ウルカが声を掛けると、彼女は二回頷いた。言語を理解できないわけではないので、意思の疎通には困らない。

「皆様、大変お待たせいたしました。これから、大会のルールを説明いたします」

 先日の受付嬢が、冒険者たちの前に立ってきれいな声を出し始めた。中身のない壮大な大会が、今開かれようとしている。

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