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「よし」

 敵の死亡を確認した後、カイルはパーティメンバーに終了の合図を出した。後方にいた魔法使いのラアラと、近くの茂みから現れた残り二人の仲間が、一斉に彼の元へ駆け寄って来る。

「お疲れ様!」

 ラアラは彼の右腕に飛びつき、彼に向かってにっこりと微笑む。モンスターに襲われているところを助けてもらった過去を持つ彼女は、彼にぞっこんなのだ。

「さすがカイルね! あのドラゴンを、一瞬で倒しちゃうんだから!」

 ぴょんぴょんと跳ねながら、大きな胸を彼に押し当てている。気を引くのに必死な様子だ。

「こらこらー! ラアラったら、カイルに近付きすぎだぞー?」

 そう言いながらカイルにベタベタするラアラを引き離したのは、スタイル抜群な猫耳姿の獣人少女・シャルだ。彼との出会いを運命だと感じ、一緒に旅をすることに決めた彼女にとって、ラアラが彼のお気に入りになってしまうことは許せない。

「でも、カイルはすごいねー。あたしたちの出る幕、全然なかったよー。ね?」

 シャルが呼び掛けた先には、可愛らしい子犬のような少女がいた。垂れた黒い耳に、少しボサついた茶色の髪。彼女はシャルに話し掛けられたことで、「あ、あの、えっと……」とつぶやいた。

「す、すごかったです、ご主人様……」

 恥ずかしそうなその言葉に、カイルは少し困った顔をする。

「ご主人様はやめてくれよ、レヴァ。パーティの一員なんだからさ」

「は、はいっ!」

 レヴァは元々奴隷として働かされていたのだが、カイルに拾われて彼のパーティに加わることになった。彼らの仲間になってはや数十日が経つが、未だに他の三人との差を感じているようだ。

「あ、あの……、カイル……さん。な、なんで、私を拾ってくださったのですか? 私、大したとりえもないし……、第一、弱いし……」

 彼女はぽつぽつと心の内を明かし、黒い瞳でカイルをじっと見つめた。新しく買っもらったワンピースのスカートをいじりながら、泣きそうな顔をしている。

 「あー、レヴァ! そういうことは言っちゃダメー!」

 彼女の涙目を見たシャルは、グイっとその肩を引き寄せた。

「カイルを信じなさーい! レヴァは見込まれたんだよー?」

「そ、そうなんですか……?」

 シャルの言葉に、レヴァは素直に驚く。奴隷だった自分を引き取るとき、カイルは特に何も言っていなかったのだ。

「うん。レヴァにはすごいスキルが眠っていると思うんだ。だからシャルの言う通り、そんなこと言わないでくれ」

 レヴァの姿を初めて見たとき、カイルはそう直感した。今はまだ発現していないが、じきに立派なスキルを開花させ、立派なパーティメンバーになる予感がする。だからこそ、彼女を拾ったのだ。

「あ、ありがとうございます……!」

 みるみる笑顔になるレヴァを見て、カイルは穏やかな気持ちになった。一度は追放されたものの、真のスキルを覚醒させたことで、新しい仲間とパーティを組み、名を馳せることができている。彼にとって、それが何よりも大切なことだった。

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