ヒストリー15 つづき④

ネルソン邸宅内


小さな古屋


《レオ視点》


夜中に目が覚めた。

僕は、しばらく、ボーっと天井を眺めて

古屋の窓を見た。

窓の外は雨が、いっぱい降ってる。

時々、空が光って、雷の音が遠くから

聞こえるんだ。

雷が怖いと思った事はないよ。

、、、大きな音にはビックリするけどね笑。

空を見上げるのが好きなんだ。

星も雲も月も太陽も虹も、みんな好き。

みんな、僕らと一緒で生きてるんだなぁ、

って思うんだ。だから、今の雲も

きっと機嫌が悪いんだね。


明日、ここを出て、外の世界に行くんだ。

今日、お母さんに言われた。

不思議と、あんまり驚かなかった。

なんとなく、そうゆう気がしてたから。

もちろん、聞いた時は嬉しかったよ。

嬉しくて、何度も同じ事を聞いて

何度も、お母さんに抱きついた。

でも、どこか不安もあるんだ。

上手く言えないけど、

もしかしたら、お母さんと離れ離れに

なってしまうんじゃないかって。

お母さんが、いなくなって

しまうんじゃないかって。


・・

あ、、まただ。

また、10歳になった時の誕生日を

思い出しちゃった。



回想

﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆﹆



お母さんは、毎年、誕生日になったら

お祝いをしてくれるんだ。

古屋の中にある物や、布切れを広げて

古屋中に飾り付けをしてくれる。


アイリ『レオ、ちょっと、こっちを

持っててくれない?』


レオ『うん!』


僕とお母さんで、飾り付けをするけど

それが、とっても楽しいんだ。


アイリ『さぁ、飾り付けは完成ね。』


部屋のランプの数も多くして

明るくした。

夜になると、ランプの灯りで

僕らが動くと、影絵みたいになるんだよ。


レオ『楽しみだなぁ。』


そして、夜ご飯を食べ終わった後は

小さいお皿に乗せられた、甘いお菓子が

でてくるんだよ。

誕生日にしか食べれないけど

すごく美味しいんだ。

・・

お菓子も食べ終わって

お母さんと歌って、一緒に踊った。

・・


アイリ『ねぇ、レオ。』


僕はお母さんの隣で

一緒に本を読んでた。

その時に、名前を呼ばれた。

いつものような感じじゃなくて

ちょっと寂しさが混ざったような声で。


アイリ『レオも10歳になったね。

一桁から、二桁に変わる10歳は、

魂が成長した証。

身体はまだ小さいけど、レオは立派な大人だ。』


レオ『大人?』


僕は、お母さんの言葉の意味を考えた。


レオ『そうだ!僕は今日で大人になったんだ!

お母さんを守れる大人になったんだよ!』


僕は、立ち上がって叫んだ。

すごく嬉しかったから。お母さんも笑ってた。


アイリ『レオに、お母さんから

話したい事があるの。』


お母さんの声には、まだ寂しさが混ざってる。

僕は、また座り直してお母さんの方を向いた。


アイリ『レオは、、なぜ、この10年間

外の世界に出られないか、この古屋の中に

いるか考えた事はある?』


・・僕がずっと聞きたかった事。

お母さんが悲しむから、ずっと聞けなかった事。


アイリ『〝お母さんが悲しむから〟、

とか考えないで。

お母さんは、今レオが思ってる事、

感じてる事を聞きたいな。』


レオ『あ、、、』


僕は、また考えた。

言っちゃダメなんじゃないかって。

でも、お母さんは今

僕の事を受け止めようとしてくれてる。

だから、僕は思い切って言ったんだ。


レオ『・・僕の目が、、』


やっぱり言わないほうがいいかな・・。


アイリ『大丈夫よレオ。今まで我慢させて

しまって、ごめんね。』


お母さんの手が、僕の頬を優しく撫でた。


つづく。

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