ヒストリー15 つづき③
アイリ『グレースの言いたい事はわかるわ。
ダウ教は、神への叛逆者〔はんぎゃくしゃ〕
である死神を絶対に許さない。
〝聖地デルフィ〟へ行って、もしも
レオの赤い眼が、バレてしまったらって事よね?』
グレース『・・はい。』
アイリ『これからレオが生きていく上で
どこに行っても、この世界には
宗教が存在する。
ダウ教、メシア教、アルム教、ピラート教。
まだ分派してる小さな宗教は、いっぱい
あるけど、それぞれが神を信仰してるの。
同じ〝母体神テトラ〟から生まれた
子供の神を。
だから、レオはどこに行ったとしても
叛逆者〔はんぎゃくしゃ〕の目で見られるわ。』
アイリが、ネックレスをまた優しく握りしめた。
アイリ『だから、懸けたいの。
〝聖地デルフィ〟は遥か昔に
〝母体神テトラ〟が舞い降りた地と
言われているのよ。
神の声は〝母体神テトラ〟の声。
その声を聞けば、レオの罪は許される。
だったら、私はそれに懸けてみたい。
レオの夢を叶えてあげたい。』
遠くから雷鳴が、聞こえた。
月の灯〔あか〕りは、いつの間にか雲に
遮〔さえぎ〕られ、ふたりの顔を照らす
灯〔あか〕りは、グレースの持つランタンの
灯〔あか〕りだけになった。
グレース『私は、、そんな危険な場所に
行ってほしくはありません。
危険しか、ないじゃないですか、、
もしお二人が死んでしまったら、って考えると
私は、とても耐えられません、、、
でも、、私は、、、』
グレースの肩が震える。
アイリ『グレース、、』
グレース『私は、お二人に幸せになって
もらいたいです、、
お二人が決めた道、夢を、応援したいです、、』
グレースがうつむき、ランタンを
握る手にも力が入った。
ふいに、木の葉に雨がポツポツと落ちてきた。
アイリ『グレースのその言葉だけで
私達は救われるわ。〝言の葉と思いやり〟は
人を幸せにする、充分な力と魅力がある。
だから私とレオは、その幸せを
胸にしまって、聖地へ行く。
ありがとう、グレース。』
雨が強くなり、木の葉からも雫が、落ち始めた。
グレース『絶対に、無事でいて下さい。
私も必ず、お二人に会いに行きます。
いつか、自由になって、
必ず会いに行きます、、』
アイリ『うん。その時は
美味しいご飯食べて、楽しい事も
いっぱいしましょう。』
アイリが微笑み、グレースの手を握った。
うつむいていた、グレースも顔を上げて
微笑んだ。雨は、いつの間にか
アイリとグレースを、静かに包み込んでいった。
つづく。
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